技術情報

ケトン体は悪物ですか?

 みなさんダイエットをしたことはありますか?近年、ダイエット方法の主流となった糖質制限ダイエットを試したことがある方もいるかもしれません。このダイエットはケトン体ダイエットとも呼ばれています。ケトン体は酪農家であれば聞いたことがない人はいないと言っても過言ではない単語ですね。ケトン体は分娩後の乳牛でケトーシスを引き起こすことで有名です。ケトーシスになると食欲低下、乳量減少、免疫力低下などの症状を示し生産性が低下します。なぜ、人間ではそのような不健康そうなダイエット法が流行しているのでしょうか。今回はケトン体について改めて紹介します。

エネルギー代謝

 生命を維持するにはエネルギーが必要です。この複雑なエネルギー代謝の中で最も重要なエネルギー源が糖です。糖は細胞の中で分解されてエネルギーとなります(図1)。体の中で糖が足りずエネルギー不足になった時は、貯蔵している脂肪を使います。しかし、脂肪は糖とは違い、そのままの形では細胞でエネルギーに出来ません。肝臓で代謝されてケトン体になることでエネルギーとして利用出来るようになります(図2)。このようにケトン体は重要なエネルギー源なのです。

図1:糖の代謝

図2:ケトン体は飢餓時のエネルギー

乳牛のケトーシス(糖尿病と脂肪肝)

 なぜ乳牛ではケトン体が問題なのでしょう。これはケトーシスになる時は糖尿病になっているからです。ケトーシスにはインスリンが足りない型( 栄養不足) とインスリンが効きづらい(インスリン抵抗性)型( 糖尿病) の2つの型があります(図3)。乳牛は両方の状態になっていることが多く、インスリンが少ない上に、効きづらい状態で非常に厄介です。そのような状態になる原因は主に3つあります。

図3:ケトーシスの型

高泌乳【高泌乳により糖の必要量が増加、順応のためにインスリンが出にくく、かつ効きづらい体質(インスリン抵抗性)になる】
分娩前の栄養不足【不足した栄養状態でも泌乳するために上記と同様の体質になる】
分娩前の過肥【体が痩せようとするためにインスリン抵抗性体質になる】

 一度インスリン抵抗性体質になると、すぐには改善されません。高泌乳は乳牛の宿命ですが、栄養不足と過肥は飼養管理によって避けたいですね。
 乳牛でケトン体が増える時に起きる症状が脂肪肝です。牛は体質的に肝臓から脂肪を放出する能力が低いため、糖が不足し多くの脂肪が肝臓にやって来ると処理しきれずに脂肪肝になります(図4)。そのため、ケトーシスになるということは、脂肪肝になるということなのです。脂肪肝になると様々な生命活動に悪影響を及ぼすことになります。


図4:処理しきれない脂肪が肝臓に蓄積

まとめ

 乳牛は糖尿病のためにケトーシスになり易く治りづらい。その結果、脂肪肝になります。乳牛のケトーシスの本質は糖尿病と脂肪肝による代謝障害です。
ケトン体は悪くない!?ケトーシスや脂肪肝でお悩みの方は、分娩前後の飼養管理について今一度見直してみてはいかがでしょうか。