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牛伝染性リンパ腫(牛白血病)の最新知見と対策

牛伝染性リンパ腫(牛白血病)とは

 牛伝染性リンパ腫(2020 年に「牛白血病」から改名されました)は、血液中のリンパ球の異常増加や全身性の悪性リンパ肉腫(コブ状の腫瘍)を症状とする病気です。牛伝染性リンパ腫はウイルスに感染した牛のすべてが発症するわけではなく、多くが無症状のまま過ごすため、と畜場で牛伝染性リンパ腫と診断されて気付いたという事例も多く、十勝NOSAI の家畜共済事故として令和2 年度は49 件発生しています。
 牛伝染性リンパ腫には4 タイプありますが、そのほとんどがウイルスが原因となるタイプで占められており、2011 年の農水省の調査報告では日本の牛の35%が既にこのウイルスに感染しているとしています。残念ながら、いま現在は有効な治療法やワクチンはありません。
 牛伝染性リンパ腫ウイルスの感染経路は非常に限られていて、ウイルスを含む血液と乳汁によって感染します。コロナウイルスやインフルエンザウイルスのような飛沫や空気感染はしません。感染経路には、垂直感染(母子感染)と水平感染(群内での感染)が知られています。(図1・2)

新たな感染牛を増やさないために…感染経路を断つ

    • 母子感染対策

 牛伝染性リンパ腫ウイルス感染牛の初乳には感染力のある細胞が含まれますが、高濃度の移行抗体で中和されるため、初乳からは感染しにくいという知見が得られています。とは言え、感染リスクが消えるわけではありません。凍結もしくは56℃で30 分間加温(パスチャライズ)することでより安全なものとなります。(図1 ※ 1 パスチャライザー使用で陰性新生子牛105 頭の乳汁感染は0%)
 帝王切開で摘出した子牛がすでに牛伝染性リンパ腫ウイルスに感染していたという報告から、子宮内感染は証明されていて、(図1 ※ 2)感染牛から感染子牛が産まれてしまう確率は、リンパ球増多症を発症している牛(ハイリスク牛)では40%以上になります(図1 ※ 3)。感染牛対策としては淘汰更新が基本ですが、「出生子牛の60%は陰性である」ととらえ、出生後即時検査で陰性牛のみを残すという方法で、後継牛を残しながら清浄化した事例もありますので、詳しくは獣医師にご相談ください。

    • 群内での感染対策

 牛伝染性リンパ腫陰性から陽性に転じる牛が夏に激増するのは全国共通の傾向であり、一方で北海道などの寒冷地で冬に陽転率が低下することから、吸血昆虫による影響は大きく、特に近年道内でもサシバエの関与が指摘されています(図2 ※ 4)。まだまだ寒い季節が続きますが、夏が来る前にこの記事を思い出していただけたら幸いです。

 

参考文献::「牛伝染性リンパ腫の新たな知見」北海道大学 今内覚(十勝獣医師会主催産業動物講習会より)