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過大子による難産を避けるために

難産の原因で最も多いのは胎子と産道の大きさの不均衡、いわゆる過大子による難産と考えられており、図1 に示す要因が関与しています。
 今回はこの中から種雄牛と妊娠期間について取り上げます。

種雄牛

ホルスタイン種雄牛では分娩難易度が算出されており、ブルブック等(図2)に記載されています。国内の種雄牛に関しては産子難産率として表現され、7%を標準として数字が大きくなるほど難産が多くなることを示しています。アメリカ、カナダ、オランダやドイツ等の種雄牛においてもそれぞれの国の基準で分娩難易度に関わる数値が表記されています。
 子牛の生時体重は父牛の影響が大きいため、未経産牛や体格の小さい牛には産子難産率の小さい種雄牛を選択して交配すると、難産を少なくできるかもしれません。
 黒毛和種ではホルスタイン種のような指標は公表されていません。しかし、黒毛和種においても体格の小さい母牛に大型の種雄牛を授精すると難産が多くなるとされています。他方、ホルスタイン種に比べ生時体重が小さいことから、ホルスタイン種に黒毛和種の種雄牛を交配し、難産を避ける方法が選択されてきました。ただし、近年は産肉量増大を目指した改良が大きく進んでおり、ホルスタイン種雄牛を交配した場合と同等の大きさの胎子が産まれると考えるほうが良いとの指摘もあります。具体的には間接検定の成績で1 日当たり増体量が0.95㎏以上の種雄牛では、ホルスタイン種雄牛と生時体重は変わらないと報告されています。

妊娠期間

牛の正常な妊娠期間は品種によって差があり、ホルスタイン種では平均279 日、黒毛和種では285 日前後とされています。この正常妊娠期間を一定期間超えても分娩しないものを分娩遅延あるいは長期在胎と呼びます。牛では一般的に295 ~ 300 日を超えても分娩しないものを長期在胎としていますが、分娩予定日を過ぎて胎子が成長を続けると過大となり、難産になりやすくなります。具体的には経産牛で295 日、未経産牛で290 日を超えると通常分娩が困難になり、帝王切開が必要になることが多くなるとされています。
 したがって、分娩予定日を1 週間程度過ぎた時点で分娩の兆候が見られない場合には、獣医師の診察を受けるようにしましょう。なお、診療を受けないで300 日を超える長期在胎の共済事故は免責になることがありますので、注意願います。

難産はその後の母子の生産性に大きな影響を与えます。種雄牛の情報を活用し、妊娠末期の牛の状態を把握することで過大子による難産を減らしましょう。


図1:過大子による難産の要因

図2


参考図書
・獣医繁殖学 第3 版 文栄堂出版
・子牛の科学 胎子期から出生、育成期まで チクサン出版社
・Current Therapy in Large Animal Theriogenology Second Edition Saunders