技術情報

海外研修より(第8回)

まとめ~連載を振り返ってみましょう~
 これまで7回にわたりミシガンの研修で私たちが学んだことを、農場における様々な問題を解決するための考え方を中心にお伝えしてきました。その中でも何度か述べてきましたが、我々が陥りがちな注意すべきポイントについて最後にまとめてこの連載を終わりたいと思います。
 本来の目的を見失い、手段(行動計画)が目的(最終目標)にすり替わってしまうことを「手段の目的化」と言います。私たちはミシガンでの研修を通して、「手段の目的化」は簡単に、そして頻繁に起こっていると気づかされました。それは農家の皆さんや我々獣医師の仕事の中においても起きています。
 例えば、第7回で述べたマイコプラズマ性乳房炎においては『検査すること』が目的と化してしまうことがあります。しかし検査することで満足し搾乳衛生や器具の消毒が疎かになってしまってはいけません。また感染症対策の中で『「どの薬が良い」「どの点滴が良い」など、どう治療するか』が目的と化してしまうことがあります。本来の目的は『感染症による損失を防ぐこと』であり、感染牛が出た時にどう治療しても損失は防げません。感染牛が増え、牛群内に蔓延しないようにするための対策を見失わないようにしなければいけません。また、第6回で述べた繁殖管理においては、様々な技術や道具を使い『授精すること』が目的になってしまうことがあります。たとえプログラム授精やホルモン処置、エコーやPAGによる早期妊娠鑑定を行い目標の期間内に何度授精をしたとしても、その前の分娩時の無理な介助や移行期の栄養状態により子宮のコンディションが悪ければ繁殖成績を改善することはできません。このように手段が目的化してしまうと、本来の最終目標は達成することが非常に難しくなります。
 農場内には他にも様々な問題や課題があると思います。それらについて、第4回で述べたように、『最終目標→中間目標→行動計画』の順に考えを整理し、PDCA サイクル(図)を意識することで課題の解決がスムーズになるのではないでしょうか。そして第2、3回で述べたような牛群を良い状態のサイクルに乗せたマネジメントができるようになるかと思います。
 私たちが見て来たアメリカという国は、過程がどうであるかよりも結果を重視して評価する考え方が非常に強く、目的・目標が明確でした。一方、我々日本人は過程も大切にする内に目的・目標がやや曖昧になってしまうこともあります。しかし、我々はコツコツ手間のかかることでもしっかり丁寧に行う誇るべき勤勉さがあります。この勤勉性とこれまでこの連載で述べてきた考え方が融合すれば確実に日本の酪農は発展を遂げると確信できました。この研修でそれに気づいたことが私たち2人にとって一番大きな収穫でした。
 この連載が皆さんの農場の発展の一助になることを願って、今回で最終回といたします。ありがとうございました。

(坂上・大和田)


図:PDCAサイクルとKGI・KPI理論