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海外研修より(第6回その2)

繁殖管理について
 前回までの2回にわたって、育成牛・哺乳子牛の管理についてお話ししました。同様にこれまでの考え方をベースに繁殖管理について考えてみましょう。ここでは繁殖成績の向上を最終目標として話を進めていきたいと思います(図1)。
 この最終目標を達成するための中間目標の一つは空胎期間を短縮させることです。さらに空胎期間を短縮させるための中間目標には、(1)初回授精における受胎率の向上、(2)空胎牛を発見して速やかに処置を行うという2つのことが考えられます。
 (1)を達成するためには、良好な状態の子宮に適切なタイミングで授精する必要があります。いざ初回授精!という時に子宮の状態が悪い、または無発情だといって治療を行っていては、空胎期間を短縮させることは困難です。そのためには乾乳から分娩時、移行期の管理が非常に重要です。分娩時に難産になっていないか、産道が傷つくような介助をしていないか、移行期に疾患にかかっていないかなど、この時のコンディションが繁殖成績に大きな影響を及ぼします。もし目標とする時期に初回授精ができないのであれば、これらの原因をまず把握し、そこに立ち返って原因を取り除き、その後同じことを繰り返さないことが行動計画の一つとして非常に重要なものです。また、他にはフレッシュチェックを行う、発情発見のツールを取り入れる、発情監視の回数を増やす、同期化プログラムをうまく利用するなどの行動計画もあります。
 (2)の達成に必要となる行動計画は早期妊娠鑑定です。エコーや乳汁によるPAG検査を利用することで授精後約30日の早期妊娠鑑定が可能です。
 ここで誤解しないでいただきたいのですが、私たちは全ての農場に早期妊娠鑑定を勧めているわけではありません。エコーやPAGによる早期妊娠鑑定はコストと手間がかかります。早期妊娠鑑定は不受胎牛を見つけ出す為に行うものであり、再度の妊娠鑑定が必須となります。受胎率や発情回帰が良好で、60日の妊娠鑑定でほとんど受胎している農場では必ずしも必要ありません。
 また(1)、(2)の両方に対し、繁殖データの管理・共有はとても重要な行動計画の一つです。繁殖台帳や繁殖管理板、ソフトウェアやアプリなど様々な管理方法がありますが、正確な情報を示し誰が見てもわかるように管理する必要があります。


図1:繁殖管理について

 ミシガンの研修で随行した繁殖検診は非常にシステマチックに行われているように感じました。十勝では、「VWP(授精待機期間)を60~80日に設定して授精を開始し、結果として空胎期間が〇〇日だった」という農場が多いように感じますが、ミシガンでは逆でした。目標の空胎期間を設定し、妊娠鑑定までの日数、同期化にかかる日数を考慮して可能な授精回数を想定しVWPを設定していました。その設定したVWPにおいて全頭初回授精ができるようにフレッシュチェックを行い、場合によっては同期化を前倒しでスタートしていました。もしそのタイミングで初回授精ができない、受胎率が低いということがあれば、授精時ではなく、乾乳・分娩・移行期の管理にまで立ち返って問題点を探し対処していました。随行した繁殖検診では分娩後30日前後でフレッシュチェックを行い、妊娠鑑定は授精後30日・60日・(120~150日)・乾乳前に行っていました。同期化プログラムも用いていましたが、大規模農場でもテールペイントなどを用いて発情を監視しており、「親父の目が1番の発情発見装置だよ」と誇らしげな農場もありました。またミシガンではデジタル・アナログの両方をうまく使ってデータを管理している農場も印象的でした(写真1)。

 繁殖成績の良し悪しにはたくさんの要因があります。また繁殖管理には様々な技術や道具、装置があります。しかしエコーやPAGを使った早期妊娠鑑定やホルモン剤を多用すること、発情監視デバイスやアプリを使うことが大事なわけではありません。それらはただの行動計画であり、目的は空胎期間を短縮させ農場の繁殖成績をよくすることです。まずは空胎期間や初回授精のタイミングは適正かどうかを確認してみましょう。また子宮の回復が悪かったり無発情が多いのであれば移行期の管理を今一度見直してみましょう。そして自分の農場にあった行動計画を実施してください。基本的なお話しかしていませんが、それぞれの農場で実施している飼養管理を見つめ直していただき、繁殖成績の向上を目指していただきたいと思います。

(坂上・大和田)

写真1:繁殖管理板などの活用例