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海外研修より(第6回その1)

育成牛と子牛の管理について(2)
 前回は育成牛の管理とその重要性についてお話ししました。目標とする基準で育成牛に授精し、分娩させるためには、新生子牛・哺乳子牛の管理も大変重要です。今回は図1の赤枠部分について考えてみましょう。それでは、ミシガンで訪れた農場の新生子牛、哺乳の管理について具体的に紹介をしながらお話していきます。

 まず初乳についてです。子牛は病気に対する免疫を一切持たずに生まれてきます。そこで免疫や栄養を含んだ初乳を与えることは、子牛を強く健康に育てる為には必要不可欠です。その際、重要なのが生まれてから初乳を与えるまでの時間、初乳の質、清潔さ、量です。多くの方々には耳にタコができる内容だと思います。しかし人手不足や時間に追われて達成できていない部分もあるかと思います。今一度要点を押さえて整理しておきましょう。ミシガンで訪れた巨大な農場では、ホルスタインの新生子牛に清潔で糖度の高い初乳を出生後1時間で4L、さらに1時間後に2Lを強制的に与えるという驚異的な早さで十分量を与えていました。これは常に分娩エリアに張り付いているスタッフがいるからこそできることであり、さすがにこれを達成する必要はありません。しかし良質(糖度20以上)で清潔な初乳を、少なくとも出生後6時間以内に4L、さらに出生後12時間以内に追加で2L与えることができれば、新生子牛の事故で悩むことが格段に減ると思われます(和牛の投与量は体重の10-12%になるように調整)。また投与に使う器具はきれいに洗って消毒しましょう。さらに器具を一度冷凍してから解凍するとクリプトスポリジウムも失活するのでクリプトスポリジウム感染症の下痢で悩んでいる方は試してみてください。


図1:育成牛の管理について

 続いて哺乳期の管理についてです。適切に初乳を与えられた子牛が、哺乳期に下痢や肺炎のためにこじけてしまっては意味がありません。
 ミシガンの農場を訪れて、日本と大きく違うと感じたのは哺乳量と哺育環境です。ミシガンで訪れた農場全てで、1日3回以上、計9L以上の哺乳量でした。廃棄乳をパスチャライズして与えている家が多かったです。ロボット哺乳の農場では、生後2週間で一回量は2.5L、2時間半の間隔を開けて回数は無制限で飲めるように設定していました。そうすると最大10~12L飲むようになります。いずれにせよ、1日9L以上飲む子牛は増体も良く体力と抵抗力がつきます。その農場では下痢で点滴が必要になるような子牛はほとんどいないそうです。ミシガンは十勝とほぼ同じ緯度で、冬場の気温も同じくらいです。ですが、現地の農家さんは「下痢で悩まされることはないね」と自信満々に話してくれました。
 哺乳量が十分で栄養が充足している子牛達が肺炎にならないようにするには、まさに今話題の【3密(密閉・密集・密接)を避ける】ことがキーワードです。人と同じで、牛も肺炎の感染拡大を防ぐには換気を良くし、一頭あたりのスペースを広く取り、子牛同士が接触しないように心がけることが重要です(写真1)。

 以上のことは、育成費用の削減という最終目標への中間目標である成長、授精、分娩を達成するための行動計画の一つですが、牛を健康に保つことで治療費を削減し、正常に分娩することで次の繁殖管理につながる行動計画の一つでもあります。この子牛、育成牛の管理について自分の農場でできていること、これからできることを確認するきっかけになれば幸いです。

(坂上・大和田)


写真1:換気の良い、過密を避けた育成舎