技術情報

海外研修より(第5回)

育成牛と子牛の管理について(1)
 これから2回にわたり、育成牛と新生子牛、哺乳子牛の管理についてお話します。
 まず始めに、育成牛の管理の重要性についてです。通常、1年間に農場から除籍・淘汰される牛は牛群の35~40%です。これを自家生産で補うのは簡単なことではありません。しかし牛を導入すると、その費用が非常に高額なことに加えて、伝染病の持ち込みなどの新たなリスクが生じます。出来ることなら自家生産の育成牛で更新したいところですが、子牛が生まれてから初めの分娩までの育成期は、生産にいたる前段階のいわば“先行投資”であり、その飼養経費は、農場全体の生産にかかる費用の15~20%を占めています。投資額は出来る限り節約したく、そのためには初産の分娩月齢を早め、早く生産に参加させることが不可欠となってきます。さらに付け加えると、育成牛の管理費用を回収するには2産以上泌乳させる必要があります。
 育成牛がより早く初産をむかえ、2産以上してもらうためにどうすればいいのか。そこで、前回お話したKGI・KPI理論を育成牛の管理に当てはめると図1のようになります。
 最終目標は、育成費用の削減です。そのための中間目標を、「①初産分娩月齢24~26ヶ月齢」とします。ここで重要なのは、分娩時の体重・体高・BCSが適切であることです。群に残って生産してもらうためには、これを満たした状態で問題なく分娩しなければなりません。その前提条件として、「②13~15ヶ月齢での授精開始」時には体重350kg、体高125cm以上である必要があります。この条件を満たすために、さらに「③各ステージ(哺乳子牛・離乳後・育成期)での成長目標」とする数値(体高・体重等)を設定し、達成に向けた行動を考えます。行動計画には、健康な子牛を誕生させる、適切に初乳を与える、牛舎環境を整備する、カウコンフォートに努める、健康と成長を促進するのに十分な栄養を与え、ワクチン接種を実施し、体重測定、体高測定や、死亡率・病気の発生率が適性であるかを定期的にモニタリングすることなどが挙げられます。
 ところが育成牛の管理でしばしば目にするのが、13~15カ月齢で授精することにこだわるあまり、他の前提条件を無視して体格が小さくても発情がみられると授精し、発情が来ないと発育不良の状態でもホルモン処置により無理やり人工授精をしてしまう状況です。その結果、分娩時に難産になり、分娩後の立ち上がりが悪くなって・・・、そのあとはご想像できるかと思います。場合によっては2産目を迎えることなく廃用・除籍ということも起きかねません。「13~15カ月齢で授精する」というのは、その月齢で授精すること自体に意味があるのではなく、その前提が整った結果として得られるものなのです。
 その時になぜ発情が来ないのか、発情が本当に来ていないのか、成長は基準を満たしているかなど、どこに問題が起きているかへ立ち返り、次に同じことを繰り返さないようにしなければなりません。そのために、記録を取りモニタリングして、目標を達成しているかをチェックし、目標に届いていない場合はその問題点を見つけ出して軌道修正するという作業を繰り返し行うのが“PDCAサイクル”です。前回お話したPDCAサイクルについては、当組合のホームページに掲載されている「広報とかち」のバックナンバーから見ることもできますので、ぜひご活用ください。
 この中間目標を達成するためには、新生子牛・哺乳子牛の管理が非常に重要です。次号では、各ステージにおける成長目標の一つとして、生後60日未満の哺乳期の管理に関して、研修で訪れたミシガンの農場での状況について事例を交え紹介させていただきます。

(坂上・大和田)


図1:育成牛の管理について