技術情報

海外研修より(第4回)

ミシガン州の酪農でベースとなる考え方(3)
 これまでにお話ししましたように、自分の農場において牛の状態を揃えて適切なマネジメントを行うためには、どのステージにどのような問題があり、どう改善すべきなのかを明確にする必要があります。それをはっきりさせないまま闇雲に様々な知識や技術を導入しても、コストパフォーマンスが悪く、期待した結果が得られない可能性があります。
 そこで重要になってくるのが、これから紹介する考え方です。

『K G I・K P I 理論』と『P D C A サイクル』

 これらは目標達成についてのビジネス用語として昔から広く使われている言葉です。
 まず、図1を見てください。この図の「KGI(Key Goal Indicator,(重要目標達成指標)」とは達成しようとしている最終目標の具体的な数値で、「KPI(Key Performance Indicator,( 重要業績評価指標)」とは最終目標を達成するために必要な中間目標の具体的な数値です。「アクションプラン」とは中間目標を達成するための行動計画です。
 わかりやすく、桃太郎を用いて簡単に解説します。
 桃太郎の最終目標は鬼を退治して村に平和を取り戻すことです。つまり最終目標は鬼が0匹になる状態です。しかし、この目標を達成しようと無計画で鬼ヶ島に単身乗り込んでもうまくいきません。そこで登場するのが中間目標です。鬼を倒すための中間目標を設定します。例えば「剣道初段を取得すれば鬼が倒せるので初段を取る」「鬼を倒すことのできる仲間を3人見つける」などです。そして各中間目標を達成するために行動計画を考えます。例えば「剣道初段を取得する」という中間目標のために「素振りを一日100 回行う」「毎日道場に通う」という行動計画を立てます。ここで重要なのは中間目標を達成することによって鬼を倒すという最終目標に到達することなので、行動計画や中間目標に囚われては意味がありません。仮に剣道初段を取るという中間目標が達成できないのであれば、「仲間を3人から5人に増やす」「鬼を倒す強力な武器を手に入れる」など中間目標の変更あるいは再設定をして最終目標を達成するということを見失わないようにしなければいけません。
 そこで次に必要となるのは、PDCA サイクルという考え方です(図2)。


図1:KGI・KPI理論

図2:PDCAサイクル

 PDCA とは、【最終目標を設定しそのために中間目標と行動計画を考える(Plan =計画立案)】、【行動計画を実際に行う(Do=実行)】、【行動計画を行うことで中間目標が達成できているのか評価する(Check =確認)】、【その評価を元に再度中間目標や行動計画を見直す(Action=軌道修正)】の4つの英単語の頭文字で、この4段階を繰り返すことによって、目標達成するまでの過程を改善しながら進めることができます。
 このPDCA サイクルとKGI・KPI 理論を常に意識することが、農場の問題を発見しマネジメントを考える上で非常に重要です。
 それでは酪農においての最終目標とは何でしょうか。「利益を上げること」だと思います。つまりは「収入を増加すること」と「経費を削減すること」となります。具体的な数値目標だと「利益を何%増加する(〇〇円にする)こと」です。そのための中間目標は「出荷乳量〇〇万トン」「育成牛の飼養経費の削減(〇〇円/頭)」「購入牛や購入飼料を◯%減らす」「治療費を〇〇円減らす」などです。それぞれの農場で具体的な数値を設定するべきです。この中間目標を達成するためにいくつもの行動計画が考えられます(例:図3)。酪農においては、中間目標や行動計画がそれぞれ複雑に絡み合っています。しかし重要なのは「矢印の上から物事を考えること」、「最終目標が達成されているのかどうかPDCA サイクルを用いて立ち返って確認すること」です。
 アメリカではこれらの意識がしっかりしているため、各農場でやるべきことが明確になり、良好なサイクルを継続しているのだと感じました。
 これまでの考え方に則って、酪農の具体的な内容を掘り下げていきます。次回は新生子牛・育成牛についてお話します。

(坂上・大和田)


図3:農場におけるKGI・KPI理論とPDCAサイクルの一例