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牛は肢が資本

 皆さんご存知のことですが、牛は立てなければ餌も水も摂取できませんし、もちろん搾乳もできません。たとえ
歩行が可能であっても、肢が痛いというだけでさまざまな経済的損失が発生します。そこで今回は牛の蹄の基本的
なことについてお話します。

健康な蹄とは

 酪農家の方なら蹄病治療に立ち会った時に、治療中に出血する場面をご覧になったことがあるかと思います。固い蹄の内側には豊富な血管(血流)があり、細胞が活発に分裂することで蹄はひと月に5 mmほど成長します。健康な蹄は、蹄尖の角度は45 ~ 50 度、蹄踵は25 ~ 45mm 程度の高さがあり、このことで四肢は過度に内転や外転したりしません。また、肢が正常な牛の背線は、立っているときも、歩いているときも平らになっています(写真1)。しかし、肢が痛い牛は、背線がアーチ状となり、歩幅が狭くなったり、足を引きずったり、負重を嫌ったりします(写真2)。

写真1:背線が平らな牛(正常)

写真2:背線がアーチ状で四肢が集合した牛

蹄病について

 主な蹄病について簡単に説明します。他の病気と同様に、早期発見早期治療により損失を最小限に食い止めます。

    • 蹄底潰瘍:蹄底の出血から始まり、蹄の深部に潰瘍を形成し、程度によってさまざまな跛行を示します。細菌感染を伴い重症化すると関節炎を引き起こし、大きな損傷となります。
    • 白帯病:白帯とは固い蹄と血管のある真皮の間にある層で、血管はありませんが柔らかい角質でできています。これが離開して出血や感染をする病気です。
    • 趾間フレグモーネ:蹄の間の皮膚が傷つき、そこに感染が起こることで生じます。軽いものだと局所の処置で治ることもありますが、感染が進行すると周囲組織の腫脹や関節炎を併発し、抗生剤の全身投与が必要となります。
    • 趾皮膚炎:らせん菌という細菌感染によって蹄周辺に生じる潰瘍性や増殖性(通称イチゴやイボ)の皮膚炎です。患部は非常に痛みが強いため、小さな病変でも牛は激しく痛がります。

さまざまな弊害

 跛行は酪農経営にとって大きな損失となります。それは乳生産の減少、繁殖成績の低下、淘汰率の増加、生乳の廃棄、跛行牛ケアのための付加的な管理などさまざまな損失が生じるためです。英国の研究者によれば、一症例当たりの経済的損失は蹄底潰瘍で627 ドル(1 ドル108 円でおよそ67,000 円)、白帯病で257 ドル(およそ27,700 円)、趾間フレグモーネや趾皮膚炎で128 ドル(およそ13,800 円)と報告されています。十勝NOSAI の昨年度の蹄病による共済廃用は約100 頭(全体の0.5%)、病傷事故は6,585 件(全体の5%)になります。常日頃から行動記録や歩様をチェックし、異常があれば獣医師にご相談願います。

 

〈参考文献〉
「これからの乳牛群管理のためのハードヘルス学〈成牛編〉 編著 及川 伸 (緑書房)」
「牛のフットケア・ガイド (チクサン出版社)」
「牛の跛行マニュアル 治療とコントロール (チクサン出版社)