技術情報

感染症の発生要因と予防

サルモネラ菌感染症を例に、宿主(牛側の)要因について考える

 牛サルモネラ菌感染症は年々増加傾向で、発生時期は夏から秋にかけて集中する傾向にあります。今もなお対応に苦慮されている方もおられるかと思いますが、今回、この感染症を例に感染の基本的な考え方(図 1)の「 宿主要因」についてお話したいと思います。※サルモネラ菌感染症の「病原体」および「環境(感染経路)」については過去の技術情報で触れていますので、ご参照ください。


 元来、サルモネラ菌は口から入り胃を通過して小腸に達し、腸管内で増殖します。牛サルモネラ菌感染症はルーメン液の性状と関係があるとされ、16 時間の絶食実験ではルーメン運動の低下により胃粘膜が融解し、蛋白の分解でルーメン液が高アルカリ性となり、さらに揮発性脂肪酸(VFA)量が減少した状況下において、ルーメン内でサルモネラ菌が著しく増えると報告されています。このことから、絶食あるいは採食の制限が加わるような飼養管理を防ぎ、ルーメン機能を安定的に維持する必要があります。また、濃厚飼料の多給などで発生する潜在性ルーメンアシドーシスの状態は、ルーメン運動の停止、停止後に起きるルーメン液の急激な高アルカリ化、免疫機能の低下などを招くことから、この感染症の発生に大きく関わっていると考えられています。

 潜在性ルーメンアシドーシスが疑われる場合には、上記右枠のルーメン発酵に影響するものを見直し、さらに生菌剤や重曹を利用するなどの対応でルーメン機能を安定させる必要があります。また、サルモネラ菌感染症予防ワクチンの接種が有効と言われていますが、「ワクチンを打てば大丈夫!」というものではなく、まず牛が健康でなければ十分なワクチン効果を得ることは出来ない、ということを補足させてください。
最後に、サルモネラ菌感染症の治療にはニューキノロン系の抗菌性物質を投与しますが、2019 年より道内の発生農場でニューキノロン耐性サルモネラ菌が確認されています。未発生農場においても、万が一発生した場合に「使える抗生剤がない!」という事態にならないよう、普段より抗菌性物質の乱用防止にご協力いただけたら幸いです。

〈参考資料〉
乳用牛(成牛)のサルモネラ発症要因と発生防止対策(平成19 年度北海道農業研究成果情報)/ ルーメン8(デーリィ・ジャパン社)/ 令和1 年度 家保総合検討会抄録