技術情報

適切な分娩監視について

 十勝NOSAIの乳用牛および肉用牛の死亡・廃用事故発生状況によると、令和元年度の胎子死(いわゆる死産)発生頭数は11,558 頭と子牛・胎子の死亡・廃用事故の63%を占めており、全分娩頭数の8.6%にもなります。素牛生産、後継牛の確保という点において、分娩事故を未然に防ぐことは非常に重要なことと考えます。そこで今回は分娩事故を減らすために、適切な分娩監視について述べたいと思います。

 一例として、アメリカの従業員が24 時間体制で分娩監視を行っている大規模農場の分娩監視マニュアル「20分ルール」について説明します(図1)。
これは、分娩牛を20 分ごとに観察し、異常が無ければ観察のみで助産はしないというものです。全てがこの通りにあてはまるものではありませんが適切な分娩監視とは「しっかりと観察し、異常がなければ待つ」ということです。
早すぎる助産により母牛には産道損傷とその後の子宮感染症、子牛にはその後の感染症リスクの増加を引き起こし、母子共にダメージを与えることになります。母牛の外陰部から足胞が現れてから経産牛では1 時間、初産牛では2 時間は待つ必要があると言われています。外陰部から手を挿入し胎子、産道に異常がなければ待って時間が経ったら再び観察する。この繰り返しにより自然分娩を確認することが理想的な分娩監視になります。


図1:20分ルール

分娩経過を確認するには

 分娩経過を観察するには外陰部から手を挿入し胎子、産道を確認する必要があります。
外陰部と手を十分に消毒した上でゆっくりとやさしく手を挿入してみて下さい。なにが触れるでしょうか?前足2 本と頭?後足2 本?胎子は動く?など様々な情報が得られます。前足か後足か分からない時は図2を参考にしてください。足先から数えて2つ目の関節の違いが重要です。必ず優しく触ってください!人工的に破水させてしまうと産道の拡張が十分ではなくなってしまうことがあります。


図2:前肢と後肢の違い(矢印は曲がる方向)
母牛の四肢の動き、蹄底と腕関節、あるいは飛節の関係に注意
(原:1976)

 

 観察をこまめに行うことで難産を早めに発見でき、結果的に助けられる子牛が増えることに繋がると思います。繰り返しになりますが「分娩は見る、そして待つ」ことです。しっかり観察して母牛にも子牛にも優しいお産をさせてみませんか?