技術情報

定時人工授精(AI)プログラムについて

 牛群の規模拡大や高泌乳牛における発情兆候の微弱化によって発情の発見は困難になってきています。そのため、発情・排卵同期化処置は繁殖管理において欠かせない技術となっています。これらの技術から発展した定時AI プログラムは、現在十数種類が報告されており、中でも膣内プロジェステロン徐放剤(CIDR)を用いたシダーショートプログラムは広く利用されています。
 ここでは数ある定時AI プログラムの原型となったオブシンク、近年アメリカで普及してきているダブルオブシンク、処置開始から定時AI までの期間が短いショートシンクについて紹介します。
 

オブシンク

 プロスタグランジンF2 α製剤(PGF2 α)投与の7 日前と2 日後に性腺刺激ホルモン放出ホルモン製剤(GnRH)を投与、2回目のGnRH 投与後に定時AI するプログラムです。最初のGnRH 投与時に卵胞が存在していれば排卵が誘起され、PGF2 α投与時は元々存在していた黄体あるいは排卵誘起後に形成された黄体が退行し、発情が誘起されます。 AI の適期は2 回目のGnRH 投与後16 ~ 20 時間になります。(図1)

図1.オブシンク

ダブルオブシンク

 オブシンクの前処置としてオブシンクを行う、つまりオブシンク処置を2 回行うプログラムです。オブシンクは排卵後5 ~9 日で開始する場合に最も高い受胎率が期待できることからこのタイミングに発情周期を調節することを目的に前処置を行います。分娩後無発情の個体に対しても最初か2 回目のGnRH 投与のどちらかで排卵誘起と黄体形成が期待できます。ホルモン剤の投薬とAI がすべて平日に実施できる点が実用的です。(図2)

図2.ダブルオブシンク

ショートシンク

 オブシンクにおける1回目のGnRH を省略したプログラムです。処置開始からAIまで3日と期間が短いことが特徴ですが、このプログラムでは直腸検査により黄体と卵胞を確認した上で実施することが必要です。近年は超音波診断装置が普及してきていることもあり、より正確な卵巣の状態を把握できるようになったので、効果的な排卵同期化が期待できます。(図3)

図3.ショートシンク

 

 これらの定時AI プログラムでは、発情徴候の有無にかかわらずAI を実施するため、理論的にはプログラムを行った牛においての発情発見率・AI 実施率は100%になります。発情徴候の有無にかかわらず、従来のAI 法と比較しても受胎率に差がないことが報告されています。
 発情発見率の向上のために人員を増やしたり、見回りの回数を増やすことは大きなコストや労力を要します。一方で定時AI プログラムは牛ごとに実施することが可能で、継続的なコストの上昇を必要としません。うまく活用することで繁殖成績の向上に役立ててみませんか?

 

 個々の農場にとって適切な方法は異なることが想定されますので、定時AI プログラムについてご質問のある方は最寄りのNOSAI 獣医師までご相談ください。