技術情報

乳熱予防について

乳熱は分娩前後に発生し、ケトーシスや第四胃変位、胎盤停滞といった周産期疾病の発生リスクを増加させると
ともに、繁殖にも影響するため生産性を低下させます。予防対策を行っている農場も多いと思いますが、現在実施
されている乳熱予防について改めて紹介します。

分娩前に行える乳熱予防

    1. ビタミンD 3筋肉内注射:分娩3 ~ 5 日前に注射します。1 回しか投与ができず、効果も不安定です。
    2. 乾乳期中のカルシウムの給与法:乾乳前期はカルシウムをしっかりと給与し、乾乳後期はカルシウムの給与を制限することで骨からカルシウムを血液中に動員しやすくする方法です。ただし粗飼料にもカルシウムは含まれるため、乾乳後期はカルシウム含有量の少ないものを給与することが重要です。特にルーサンはカルシウム含有量が高く注意が必要です。
    3. 乾乳後期のDCAD 利用:飼料中の陽イオン(ナトリウム、カリウム)、陰イオン(塩素、硫黄)のバランスで乳熱を予防する方法です。DCAD =(ナトリウム+ カリウム)-(塩素+ 硫黄)で計算し、DCAD をマイナスにすることで血液を酸性にし、分娩時に骨から血液中へカルシウムを動員しやすくさせます。カリウムの高い粗飼料を給与しないで、硫黄を含む天然石膏を給与するなどで対応できます。この方法を利用する場合は飼料設計者と相談してください。

分娩後に行える乳熱予防

    1. 経口カルシウム剤投与:腸管より吸収させる古くからある方法です。以前より吸収しやすくなったものもあります。低カルシウム症状のある牛は消化管の動きが弱いため、吸収量は落ちると考えられます。
    2. カルシウム剤の静脈内投与:速やかに血液中のカルシウムを上昇させるため乳熱の発症牛に効果的です。後述しますが、血液中のカルシウム濃度が高値になると逆効果になる場合があります。
    3. カルシウム剤の皮下投与:経口投与と静脈内投与の中間のイメージです。静脈内投与に比較し持続性があります。

カルシウム剤の投与経路の違いによる注意点

図は、分娩後のカルシウム剤投与の経路の違いによる血液中カルシウム濃度の推移について、静脈内投与群、経口投与群、無処置群の3 つで比較したものです。静脈内投与は、他の投与方法に比較し血液中カルシウム濃度を急激に増加させますが、必要以上に高値になると生体の反応としてカルシウム濃度を下げる方向に働いてしまいます。そのため、翌日のカルシウム濃度が低くなり人為的に乳熱を引き起こすことを示しています。もちろん臨床症状がある牛には静脈内投与が効果的でありますが、低カルシウム症状が無い場合は経口投与、皮下投与、あるいは静脈内と皮下に半量ずつ投与する方法がよいと考えられます。

図:分娩後の乳熱予防法による血液Ca濃度の変動

 乳熱予防についてご質問等ある方は最寄りのNOSAI 獣医師までお問合わせください。