技術情報

牛の妊娠鑑定について

 前号に続き、繁殖関連の話題です。近年、農場における妊娠鑑定に直腸検査だけでなく、超音波検査や乳汁検査といった新しい検査方法が利用できるようになりました。今回は、それぞれの妊娠鑑定の特徴や注意点を紹介します。

1. 妊娠鑑定の方法と特徴

 1)ノンリターン法

     授精後、発情が回帰しないことを確認する方法です。牛に対するストレスが無く、最も簡便ですが、妊娠していても発情を見せる個体や、妊娠していなくても発情が回帰しない、もしくは見落とす可能性もあるため、下記の方法より精度は低くなります。

 2)直腸検査法

     獣医師による直腸検査によって妊娠の有無を確認する方法です。授精後40 日前後から実施可能で精度は高く、空胎であった場合その場でホルモン投与等の処置を行うことが可能です。

 3)超音波検査法(エコー)

     獣医師による超音波検査によって妊娠の有無を確認する方法です。授精後30 日前後から実施可能で双子や胎児の心拍も確認できます。また、直腸検査よりも卵巣や子宮の状態を正確に把握できるため、より適切な処置を行うことが可能です。

 4)乳汁検査法

     近年利用可能になった乳汁中の妊娠関連糖タンパク(PAGs)を検出する方法です。授精後28 日から実施可能で精度は高いのですが、授精後50 ~ 70 日に行った場合は判定保留の割合が増加します。

2. 妊娠鑑定の時期と主な目的および注意点

  A 授精後28 ~ 40 日(早期妊娠鑑定):空胎牛の早期摘発
  B 授精後50 ~ 70 日:受胎の確認
  C 授精後120 日~:流産していないかの確認

    •  超音波検査やPAGs 検査の普及により、現場でも早期妊娠鑑定を実施できるようになりましたが、この時期は流産の発生率が高いためその利用には注意が必要です。なぜなら、海外では農場により差はありますが、上記Aの早期妊娠鑑定で妊娠していた牛の10 ~ 20%程度が、上記Bの2 回目の妊娠鑑定までに流産したという調査結果があります。早期妊娠鑑定時には受胎していたが、その後発情や流産が確認できず、分娩予定日近くに空胎が判明した、ということを防ぐために、再度の妊娠鑑定は必ず行う必要があります。早期妊娠鑑定の最大の目的は空胎牛を早期摘発し必要な処置を行うことです。
       早期妊娠鑑定の空胎にがっかりするのではなく、「受胎してない牛が早く見つかってよかった」とプラスに考えてみてはいかがでしょうか。
 どのような妊娠鑑定の方法が適切かは、農場によって異なります。妊娠鑑定の方法についてご質問等ある方は最寄りのNOSAI 獣医師までお問い合わせ下さい。

図:各妊娠鑑定法の特徴