技術情報

乳牛の暑熱対策

1.ワールドカップとホルスタイン

 乳牛といえばホルスタインと言うくらいおなじみのこの牛、オランダの北オランダ州、フリースランド州、ドイツのホルスタイン地方が原産地です。地図で見ると北海道よりまだ北に位置するこれらの地域。平均気温では日本よりかなり低く、ホルスタイン地方より南にあるドイツの首都ベルリンで最も暑い7月の平均気温が20.6℃位だそうです。

オランダ、ドイツの北部地方がホルスタインの故郷です。北海道より北に位置しています。

2.心当たりがありませんか?

乳が出ている牛ほど暑さに弱い
大きい牛ほど暑がりだ
暑いと呼吸も心拍数も多くなる
座っているほうが、呼吸が速くてつらそう
若牛のほうが暑くても元気だ
太った牛、毛深い牛、黒い牛(?)汚れた牛は暑さに弱い
暑くなると、まず草を食わなくなる
夏はやたらと飼槽が汚れる
暑いと飲水量が増える
搾乳が終わると牛が一斉に水を飲む
窓をあけているのに牛舎の隅は風が流れない
夕方涼しくなってから餌を与えているのに食いが悪い
扇風機を回したら処理室の暖気が牛のほうへ流れてきた
当たり前といえば当たり前のことばかりですが、それぞれ訳があります。

3.体のなかで作られる熱 VS 外へ逃げて行く熱

体熱生産:食べたエサから生きて行くために必要な熱を生産する+ルーメンでの発酵熱

  • エサを沢山食べるウシほどルーメン発酵熱が多い
  • ルーメン内に長くとどまるエサほど発酵熱が多い
  • 泌乳量が多いウシほど沢山エサを食べなければならない
  • 体の大きいウシほど      〃
  • 乳量の多いウシほど熱生産量が多い

体熱の放散:体の中で発生した熱は外へ逃がさなければならない

体の表面から直接外気へ逃げて行く熱

  • 太った牛、毛の長い牛、糞鎧をつけた牛は熱が逃げにくい
  • 立っている時のほうが熱の逃げる面積が大きい
  • 血液循環量を増やして体内の熱を体表へ運ぶ=心拍数が増える
  • 風があたると放熱効果が大きい
  • 汗が蒸発するとき気化熱を奪う
  • 湿度が高いと熱が逃げにくい
  • 風が当たると効果が大き
  • 呼気および体表からの水分の蒸発による放熱
  • 呼吸数を増やして熱を外へ逃がす  

4.うちの牛は大丈夫?

 牛の“暑い!”サインをいち早く見つけるために、まずどの牛に注目すればよいのか少し見えてきたような気がします。逆に同じ牛舎のなかでも暑さに弱い牛をできるだけ良い場所に移してやる工夫ができるかもしれませんね。

牛の“暑い!サインあれこれ

体温の上昇、心拍数の増加、呼吸数の増加、発汗 立っている時間が長い、粗飼料の採食低下→飼料全体の採食低下、飲水増加、乳成分の低下、生産性の低下(泌乳、繁殖)

5.それではどうする?暑熱対策

物理的に涼しくしてやろう
①ストールや給餌場に日除けやひさしをつけたり、放牧場に庇陰林を設ける。
②毛刈りをする。体表面からの熱が逃げやすくなり扇風機の効果も上がります。
体表に汚れがついているとこれも断熱材の役目をします。ウンコの鎧なんてとんでもない。

③牛舎内に外気を導入して温度、湿度を下げる
④牛舎の窓を開ける → 窓を外す屋外の自然の風を利用して牛体の熱放散を促進します。
⑤扇風機、ダクトファン自然通気だけでは効果が得られない場合は強制的に風を送ります。
通路に風を送る場合、扇風機が十分に風を送れるのは羽の直径の10倍程度と考えて扇風機の台数を決めます。ダクトファンは新鮮な外気を取り入れて牛舎内の温度と湿度を下げることができます。

扇風機

大型ファン

ダクトファン

⑥トンネル換気
畜舎をトンネルに見立てて、長軸方向に空気を移動、排出させる方法で最近取り入れるところが増えてきました。牛舎内全体の空気が1分間に1回入れ替わること、牛舎内に秒速1~2mの風が流れていることが必要です。

ファンによる排気

反対側から入気

ちょっとマニアック
体感温度 = 気温(℃)-6×√風速(m/秒)という公式があります。風速が2mのとき体感温度は約8.5℃も低下します牛にとって体感温度 18~19℃くらいまでが安全域です。

⑦リレー式換気
フリーストールなど開放的な牛舎でトンネル換気ができないところでは大型扇風機を一列に並べて風を一定方向に押し出すことで牛への送風と換気を行います。
⑧噴霧+送風システム
扇風機に噴霧装置を組み合わせたもので霧の気化熱で牛舎内の温度を下げます。水滴が乳房を濡らすことなく舎外へ排出されることが必要です。

⑨ほかにも天井を高くする、屋根に散水する、屋根や壁に断熱加工を施す etc

6.もうひとつの暑熱対策

エサの与え方:いかに摂取量を低下させないか

①十分な水、きれいな水、飲みたいときにいつでも飲めるウオーターカップは汚れていないか(匂いのする水は飲みたくない)水のみ場は十分確保されているか(弱い牛がいつまでもウロウロ)給水の水圧は十分にあるか(隣の牛が飲んでいると水が出てこない!!)

  • 暑いときには冷たい水を飲むことで体温を下げる効果もあります。掃除のしやすい水 槽がいいですね。繋ぎ牛舎であれば、連続水槽は優れものの一つです。(獣 医さんは注射がしずらい。)
  • 十分な給水場は確保しなければなりませんがあまり水槽が大きすぎると水温が上がったり掃除がおっくうで水が汚れ勝ちになります。
  • フリーストールでは特に牛の流れを考えて水槽の設置場所を選びます。
  • 「飲みたいときにいつでも」とはいいましたが、牛は搾乳直後の1時間以内に1日  の飲水量の70%を飲むといわれています。繋ぎ牛舎でも、フリーストール牛舎でもこの時間帯にすべての牛が十分水を飲めるような気配りが必要です。