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牛コクシジウム症

 牛のコクシジウム症は、昔から知られている疾病です。一般的に成牛の発症はまれで、多くの場合は不顕性感染です。しかし、子牛の感染においては時に下痢、血便などの重篤な症状を呈し、発育不良、斃死することもありその経済的損失は問題となっています。

原因

 牛のコクシジウム症の原因となるのはEimeria属の原虫で、15種類ほど知られていますが、病原体として最も重要なものは、発生が多く、病原性が強い、E.zuerniiおよびE.bovisです。ついでE.ellipsoidalisやE.auburnensisなどがあげられます。

コクシジウム オーシスト(黒澤隆 原図引用)

感染様式

 感染してからおよそ18日で未成熟オーシスト(厚い殻に包まれた虫卵のようなもの)が糞便中に出てきます。未成熟オーシストは外界にでると2~7日間で成熟オーシストとなります。この成熟オーシストを牛が摂取することにより感染が成立します。牛の消化管内に侵入したオーシストからスポロゾイト(種虫)が脱出し、腸粘膜上皮細胞内に進入します。腸内で増殖を繰り返し、最終的にオーシストが形成されます。このオーシストが上皮細胞とともに放出され、糞便とともに体外に排出されます。感染からオーシストが排出されるまでの期間や、排出されている期間はコクシジウムの種類によってほぼ一定です。体内で増殖した原虫は、すべてオーシストとして排出されてしまうので、感染源が絶たれれば、体内のオーシストはやがて消失してしまいます。

『From Hammond、1964より一部改変』 第一製薬より提供

症状

 加齢、感染濃度、免疫状態などによって下痢の程度はまちまちですが、急性と慢性に分けることがあります。

典型的な血便(黒澤隆 原図引用)

粘液性血便のため汚れているおしり(黒澤隆 原図引用)

急性コクシジウム症:

 離乳後から、一年未満の育成子牛に発症しやすいです。E.zuerniiやE.bovis などの重度感染時にみられます。E.zuerniiは感染後7~9日目に、E.bovisは感染後15~16日目に発症します。カタル性・出血性の腸炎を起こし、数日間出血性下痢が続き粘血便を排出します。さらに重篤になると、腸粘膜がそのまま排出されたような偽膜性腸炎を呈します。食欲不振、元気沈衰、怒責、脱水、貧血などがみられ、症状の悪化に伴い歩様異常、起立不能に至り死亡する場合もあります。発症後適切な処置がされれば、症状は回復しますが、完全な駆虫ができなかった場合長期間オーシストの排出が持続し、感染源となります。

慢性コクシジウム症:

 数種類のコクシジウムの混合感染の場合が多く、軟便や下痢が持続し、元気沈衰、
食欲不振、体重減少、発育不良などが認められます。

治療
 サルファ剤(スルファモノメトキシン、スルファジメトキシンなど)の投与が有用です。抗生物質では治療できません。症状に応じて対症療法も行います。

予防
 感染源であるコクシジウムのオーシストは、環境や薬剤に対して抵抗性が高いため、殺滅は容易ではありません。加熱やオルソ剤による消毒が有効ではありますが、牛の飼育環境によっては対応が難しいことがあります。発病・感染牛の早期発見・隔離によりオーシストの散乱を防ぎ、畜舎・パドックなどの清掃・消毒を行い、以下のようなサルファ剤による予防プログラムなどを参考にして、新たな発症を予防しましょう。

プログラムの一例