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分娩後に良い発情がこない理由(わけ)

「うちは繁殖が良くない」とか、「いい発情がこない」、「人工授精しても受胎しない」等々、繁殖に関して様々な悩みがあるのではないでしょうか?今回は繁殖生理と栄養管理の点から繁殖障害の原因について考えてみたいと思います。

繁殖を良くする

1年1産が目標(12~13ヶ月分娩間隔)

分娩後85日~115日までに受胎させる

 実際、分娩後85日~115日の間に受胎するような良好な発情がきていますか?私達が現場で繁殖検診をする時、今言ったような発情がくる牛群はあまりないのが現状だと思います(そうではない農家さんも実際にはありますが・・・)。
それでは何故、分娩後85日~115日の間に受胎することができる発情がこない、或いは、発情があるが鈍性で弱く、人工授精しても受胎しないのでしょうか?

これらの原因としては

◆分娩時の難産や、起立不能症、第4胃変位等の分娩後疾患(いわゆる、周産期疾病)

◆乾乳期から分娩後、泌乳最盛期までの栄養管理

などが考えられます。

 周産期疾病のため、分娩後の乾物摂取量が減少し、エネルギー不足が生じ、体重減少をまねきます。その結果、牛は痩せ、ガリガリになり毛艶が悪くなります。

 分娩後の栄養管理が卵巣機能や受胎率に影響を及ぼします。それはどういうことかと言いますと、卵巣にある原始卵子が成熟して卵胞となり排卵するまでには2~3ケ月という期間を必要とします。よって、分娩後の低エネルギーによる栄養管理は、分娩後85日前後にできる卵胞の発育初期段階にダメージを与えるため、その時期の発情が良くなかったりして、人工授精しても受胎しないのです。また、分娩後から泌乳ピークまで低エネルギーが続くと、更にそれ以降の発情も良くなく、発情がきても受胎しないということになり、結果的に分娩間隔が延長してしまいます。(図参照)

以上のことから、繁殖をよくするためには

 分娩後1~2ケ月間の体重減少またはBCSの喪失を最小限にするということ(分娩後の低エネルギーを防ぐということ)
 そのためには、乾乳を2群に分け、配合飼料の差別給与を実施し、第1胃の微絨毛の発育を促進します。分娩後は良質な牧草を給与し粗濃比を40%以下にならないようにし、エネルギーと蛋白のバランスを整え、十分に充足させます。配合飼料の増給は4日に1kgとし、過剰給与による消化障害(アシドーシス)を防ぎます。
 最後に、周産期疾病を減らし、適正な栄養管理の実践により、泌乳による体重減少を抑える、または防ぐことが、分娩後の低エネルギー状態を最小限にすることができ、繁殖向上のポイントとなります。
尚、乾乳期のエサ給与の詳細については2002年のホームページ”分娩前の牛をいかに飼うか”を参照してください。或いは、牛群検診担当者に問い合わせてください。

分娩後日数
分娩後におけるエネルギーバランスと分娩後初回から6回目までに排卵する卵胞の発育過程(Britt, 1995)

 上図において、分娩後84~112日の卵胞は、排卵番号の4~5回目に相当し、その2~3ケ月前のエネルギー状態はマイナス7(斜線部の最も低いところ)で分娩後1週間のところになります。また、分娩後50日以前に良い発情がくるけどそれ以降全く発情をみせなくなるという話をよく耳にしますが、これは排卵番号の2と3に相当し、2~3ケ月前のエネルギーバランスが負の状態ではないためです。しかしこの時期(乾乳期)に劣悪な飼養管理をしていると、分娩後50日以前の発情もきません。以上の事から分娩後50日以前に人工授精しても不受胎になりやすい(妊娠が維持できない状態に陥りやすいため)ので分娩後50日以前の人工授精はしないほうがよい。