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大腸菌群による乳房炎

夏になると乳房炎の発生が多くなってきます。特に、大腸菌群による乳房炎で死亡・廃用、治癒しても泌乳量の低下などで経済的損失が大きくなります。大腸菌群とは、大腸菌、クレブシエラなどで糞便中に多く生息する腸内細菌です。
十勝NOSAIにおける平成13年度原因菌別乳房炎発生状況から、大腸菌群(CO)による乳房炎の発症は全体の1/4を占め、その他レンサ球菌(OS)に次いで多いことがわかります(グラフ1)。
分娩後10日以内に他の菌種とともに発症が多いことから、分娩のストレスによる免疫力の低下が大きな要因であることがわかります(グラフ2)。

グラフ1 平成13年度原因菌別乳房炎発生状況(同定分23,630件)

グラフ2 平成2年分娩経過に伴う乳房炎原因菌検出株数(十勝管内5市町村 3,667株)

大腸菌群による乳房炎の症状は?

写真1

写真2

大腸菌群による乳房炎は、環境に存在する大腸菌群が乳頭に付着したのち乳頭口から乳房内に感染して発症します。乳房における症状は腫脹、熱感、疼痛が著しく、乳腺の内皮細胞や血管の損傷により血液中の血清成分が乳房内に浸出し乳汁が希薄水様乳や分離乳になります。全身症状は、発熱、食欲不振ですが、重症になると敗血症や細菌毒素の作用により呼吸速迫、起立困難、目が虚ろ(写真1)、眼結膜充血、下痢と脱水、皮温低下、乳房皮膚が紫赤色になり(写真2)起立不能となったり時には死亡します。発症すると重症になるので乳汁性状、全身症状を早期に感知し治療することが重要です。

夏になると大腸菌群による乳房炎の発生割合が高い

グラフ3 平成13年月別乳房炎発生割合(42,890件)

グラフ4 おがくずにおける黄色ブドウ球菌と大腸菌の増殖について

分娩によるストレスと暑熱の関係

 夏期における分娩後1週間以内の乳房炎による死亡・廃用は、大腸菌群の感染によるものが一番多いです。(グラフ5)これは分娩によるストレス状態にある牛は、暑熱時に免疫力低下が起こり牛床に多く存在している大腸菌群に感染したためです。このことは、(独)農業技術研究機構畜産草地研究所で行われた生体防御機構に関する試験においても、副腎皮質刺激ホルモン投与によりストレス状態にある牛は末梢血好中球機能は低下するが、暑熱時にはこの低下を助長されると報告しています。

予防について

 大腸菌群は、他の菌種とともに牛床に多く存在しています。乳頭に付着する菌数を減少させることが重要です。

  • 搾乳手順を正しく実施し感染を防ぐ(とくにディッピング)
  • 牛床の消毒と新鮮な敷料を用いる
  • 乾乳期の飼養管理を十分に行い分娩後の疾病(乳熱、ダウナー症候群など)を予防する
  • 適正な換気を行い牛舎内の温度を下げるなどの暑熱対策を行う
  • 乳房が下垂している牛はとくに注意する(写真3)

グラフ5平成13年 原因菌別分娩後1週間以内死廃件数(7~9月菌種確認90件)

写真3大腸菌性乳房炎を発症した牛の乳房下垂

HP掲載にあたり貴重なデータを引用させていただきました(独)農業技術研究機構畜産草地研究所諸先生方に深謝致します。