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牧草の繊維について

 粗飼料は、牛の飼料の内およそ40から50%を占める飼料です。ご存知のとおり、その刈取り時期・発酵品質・保存状態により乾物摂取量(DMI)に大きく影響を与えます。安定した生産性、繁殖性を得るためには、乾物摂取量を最大にし、且つルーメン発酵の最大化、菌体蛋白合成の最大化がポイントになります。
 今回は主食である牧草について乾物摂取量に与える影響、効果的な利用法について考えてみたいと思います。

粗飼料(牧草)の繊維について

 飼料分析で示される繊維は、分析方法によりNDF(中性デタージェント繊維)又はOCW(細胞壁物質)と呼ばれるものです。繊維はセルロース・へミセルロース、リグニンから構成されています。このうち前2者はルーメン内で消化され、後者のリグニンはほとんど消化されないものです。後者のリグニン(リグニンと結合したセルロース・へミセルロース)が主体となり、ADF(酸性デタージェント繊維)又はOb(低消化性繊維)と呼ばれています。このように繊維は分析方法により分類されますが、NDF・ADF・Obの多い繊維は、刈遅れを意味し、ルーメン内で長く停滞します。

乾物摂取量への繊維の影響について

1.物理的な制限

  刈取り時期によるNDF・ADFなどの繊維の多い牧草を食べると、ルーメン内で停滞するため通過速度が遅くなり乾物摂取量を抑制します。

2.科学的な制限

 繊維(NDF・ADF)を少なくした飼料を与えると、ルーメン内停滞時間は短縮しルーメンの通過速度は速まります。しかし反芻回数は減り、唾液分泌量が減るためルーメン内発酵産物(揮発性低級脂肪酸:VFA)が緩衝されず、ルーメン環境を悪化させるため乾物摂取量は抑制されます(1月に書きましたアシドーシスの原因になります)。

3.品質

 特にサイレージ類では発酵品質が問題になります。多くは低水分による二次発酵(カビの影響)と高水分による酪酸発酵です。多くは刈取り時期の天候と踏圧によることが原因です。不良発酵は、肝臓に負担がかかり、かつ嗜好性を落とすために乾物摂取量は抑制されます。

 そこで牛にとって理想の主食としての牧草は、嗜好性・品質が良く、物理的・化学的な影響を受けないバランスのとれた繊維が必要になります。右図は物理的・科学的要因を示しました。
 右のグラフの物理的調節曲線と科学的調節曲線の交点が乾物摂取量の最大化が得られる事になります。乳量区分では、40kgで27%、30kgで33%です。これより低い場合は、発酵酸による科学的抑制を、高ければ繊維による物理的抑制を受け乾物摂取量は減少します。繊維を考える場合、ルーメン内にたくさん詰め込める牧草が有利で、反芻を起こす繊維(切断長)を含むことが必要なことがお解かりいただけたことと思います。

牧草の特性

 牧草は生育時期が進むと収量は増えますが、繊維部分が増し栄養価は下がります。地域差はありますが、1番牧草の出穂始期がチモシーでは6月初旬です。この時期に収穫できると、十分食い込める繊維と高い栄養価が得られますが、収量は少なくなります。そこで、不足を補うために2番牧草が利用されます。通常2番牧草は、1番牧草収穫後50日頃の収穫が理想ですが、せめて盆前に収穫したいところです。2番牧草は、夏場の暑さの中で発育するため、茎に対して葉が多く見かけ上の栄養価は高くなります。しかし多くの葉を支えるため頑丈な繊維(リグニン化)になりやすい性質があり、結果的に消化率の低い牧草になります。通常与え始めると”乳量がさがる”ことは良く聞く話ですが、実質利用できる栄養分が少ないからです。3番牧草の栄養価は、ほぼ1番と同様です。但し繊維が少ないのでルーメンマットを確保する対策が必要です。

2番草の特性
高蛋白・低エネルギー・高ミネラル・繊維含量が多い。
3番牧草
栄養価はまずまず。繊維含量は少ない。

2番牧草の有効な利用法

①主体給与は要注意です。
1番牧草と併用するか、パドックでおやつ程度に与えるのが理想です。特に乾乳後期に与えるとエネルギー不足、ミネラル過剰になり分娩性低カルシウム 血症・周産期病の原因になります。
②消化性の高い繊維を併用しましょう。組み合わせる飼料として
粗飼料:早刈り牧草、マメ科牧草など
高消化性繊維:ビートパルプ、ルーサンペレット、大豆皮など
*副産物は反芻を起こす物理的な長さの繊維は期待できません。
③エネルギーの高い飼料を併用しましょう。
コーン類(加熱圧片、ミール、引き割り)、大麦、小麦など。
*牧草の繊維(ルーメン内通過速度)に併せて選択して下さい。

 現実的には2・3番牧草を給与されている方々が多いのは現状です。牧草の性質・栄養価をご理解のうえ有効に利用していただければ生産性の変動を克服できると思います。そのためには、必要であれば良質牧草の購入の検討も必要になります(安くて嗜好性の悪い牧草は、結果的には高い牧草になります)。

牛は反芻動物である! 牧草は主食! 牛を健康に保つためには、ルーメン微生物を健康に飼うことが必要! それには、良質・反芻に必要な物理的な長さの繊維の確保が必要です。牛は乳成分・便の性状・乳房の色などのサインを送ってくれます。そのサインを見落とさないように管理して下さい。今年は、牛たちが喜んで食べて、生産性を発揮できる早刈牧草の収穫を計画してみてはいかがですか。