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重種馬の繁殖管理を良くしよう

 今年もいよいよ雌馬の分娩、繁殖シーズンの到来です。生産者にとっては、昨年努力して妊娠させた馬が無事分娩し、来年に向けて受胎させなければならない、1年で最も忙しい時期を迎えます。そこで『分娩前後の馬の飼養管理について』に続き、分娩後の雌馬の繁殖管理についてもう一度確認してみましょう。

1.雌馬の性周期について

 雌馬は春から夏までの季節繁殖動物であり、初回発情が早期に起こり(分娩後5~14日:分娩発情)、交配可能なことが他の家畜と大きく異なります。正常な発情周期は、22~23日でこの内最後の1週間位が種雄馬の乗駕を許容する発情期となります。つまり発情終了から次の発情開始までの日数は2週間となるわけです。通常の排卵は発情最終日かその前日(発情終了の1.5日位前)に起こります。

2.分娩発情について

 分娩という過酷な試練を乗り越え、5~14日の短期間で子宮が回復できた雌馬は受胎する可能性はありますが回復していない場合の交配はその後の繁殖成績にとって悪影響をおよぼし兼ねません。一般的には雌馬の生殖器の感染病は分娩発情時に交配された馬に発生が多く、また正常分娩でも子宮の完全回復は35日後であるといわれており、分娩発情時の受胎率は第2回以降の発情時の受胎率に比べ低いともいわれています。したがって以下の条件が認められた場合は次回発情まで交配を見送るか、獣医師に相談してください。

分娩発情で交配すべきでない条件

  1. 難産(胎児過大、胎児失位、死産を含む
  2. 胎盤の排出まで4時間以上を要したもの
  3. 胎盤・胎膜の一部が子宮に遺残し、用手法により胎盤を除去したもの
  4. 分娩時に裂傷・広範囲の内出血が認められるもの
  5. 分娩後7~9日の子宮膣部粘液の細菌検査で病原菌陽性のもの
  6. 発情時、外陰部・子宮膣部・粘液に異常所見の認められるもの

3.繁殖記録の重要性

 発情を見つけるためには、普段から良く観察し、わずかな行動の変化や典型的な兆候であるライトニングや陰部の腫大、粘液の排出、排尿回数の増加等を発見する事が重要です。しかし、重種馬の外部兆候から発情を的確に見つけることが難しくなっているため、生産者・種雄馬管理者・獣医師が各個体の繁殖に関する情報を共有する事が必要になります。一つの方法として繁殖台帳の利用が有効と考えられます。そこで農用馬繁殖台帳(十勝農協連、十勝馬事振興会青年部会、十勝NOSAI作成)を例に取り説明しますが、以下三つの項目に注意して記入していくことが重要となります。

①分娩情報の記入:分娩時の状況を記入することにより、分娩発情時の交配の是非・治療の参考になります。

②あて馬・種付等の記入:カレンダーに記入することにより、繁殖周期・発情期間 ・種付日を把握し、次回あて馬時期や妊娠鑑定の計画を立ることに役立ちます。

③子宮・卵巣等の所見の記入:子宮・卵巣所見の継続的記入により交配適期・治療の参考になります。

今回は繁殖管理について一部を説明しましたが繁殖成績を向上させるためには馬産に携わる人々の協力が重要です。