技術情報

乳用子牛事故低減に向けた感染症対策

はじめに

 長年組合員さんからの要望の強かった乳用牛子牛共済がスタートして、5ヶ月余りが経過致しました。6月末までの十勝NOSAI全体の被害頭数は、乳用子牛死廃頭数219頭、乳用胎児死廃頭数2,600頭、計2,819頭となっており、当初引受頭数166,007頭に対して年間被害率 6.8 %と高い傾向にあります。胎児の死廃予防対策は前回の技術情報において触れましたので、今回の話題は分娩後、腸炎、肺炎等の感染症による乳用子牛事故低減に向けた感染症対策です。

感染症対策といっても話題が非常に多岐にわたるので、今回は①畜舎衛生と環境、②子牛の管理と応急処置、③予防についてのお話です。

畜舎衛生と環境

【図1】家畜共済乳用子牛・胎児事故頭数H16年4月~6月


① 畜 舎 衛 生

(1) 分娩房
図1は当初引受乳用子牛(6ヶ月以下)と出生子牛・胎児の死廃頭数を示します。出生子牛および胎児の事故においては、胎児死ならびに新生児死が78.0%と死廃事故の殆どを占め、これを減らすには分娩時の管理が大変重要になってきます。

分娩時の事故防止対策

◎清潔な広い場所で分娩させる(分娩房)
◎乾乳期の栄養管理(適正な餌と十分な水)
◎分娩間近の親牛の十分な観察

清潔な分娩房で分娩させることは、出生子牛の感染症を防止するうえで非常に重要なポイントになります。新たに分娩房を作らなくても既存の施設を利用できる場合もあります。分娩房の確保が無理な場合には、出来るだけ清潔な場所で分娩させるよう心がけて下さい。参考に幾つか分娩房を紹介しておきます。

清潔な分娩房

牛舎を仕切った分娩房(4間四方、2~3頭分娩)

空き車庫を仕切った分娩房

空いた馬房を利用した分娩房

② 子牛の畜舎衛生

 子牛は体力がなく免疫力も不十分なため、特に清潔でストレスがかからない環境で飼養しなければなりません。

◎温度・湿度管理;
・夏の高温多湿対策 体からの蒸散が妨害される
<対策>十分な通風、扇風機等

・冬の低温乾燥対策 -10℃以下の低温で生産限界となりDG(日増体量)低下します。乾燥状態では粘膜防御能の低下します。
<対策>通風、保温マット、ヒーター等

◎敷き料
汚れた敷き料は感染源になります。糞尿のアンモニアガスにより粘膜防御能の低下します。
<対策>敷き料のこまめな交換

◎伝染病の予防
カーフハッチの利用

カーフハッチ

スーパーハッチ

子牛の管理と応急処置

子牛の管理の注意点

  1. 初乳の給与;免疫増強のため、出生後6時間以内、遅くとも12時間以内に少なくとも2L与え、24時間以内に総量で少なくとも6L飲ませます。
  2. ハッチへの移動;出生後はハッチ等に移動し、なるべく他牛との接触を避けましょう。
  3. 環境管理;清潔で乾いた敷き料を十分入れましょう。
  4. 哺乳;毎日、決まった時間に一定の量・温度で哺乳します。そうしないと消化不良性の下痢を起こすことがあります。
  5. こまめな観察;哺乳量、糞便の異常、呼吸の状態、検温などにより異常牛の早期発見が重要です!

子牛の様子がおかしいと感じたときは、まず症状の把握をし、経口電解質、内服薬等で応急処置を施し経過を観察します。重篤と思われたときは診療を依頼してください。以下に観察すべきポイントを列挙します。

ポイント

  1. 便の性状観察
  2. 呼吸器の異常(せき、鼻汁、呼吸速迫)
  3. 体温測定
  4. 食欲(哺乳欲)の観察
  5. 脱水の有無
  6. 伝染性 (同居牛への感染)の有無

以上のポイントを観察し、発熱や脱水を伴う白痢・赤痢・伝染性の下痢等は獣医師による往診を依頼しましょう。
それ以外の軽度の軟便・下痢便・脂肪便・その他の消化不良性の下痢は、自家治療と看護に努め、長期化するようなら獣医師の往診を依頼しましょう。早めの治療と看護が重要です。
それでは下痢や肺炎の原因となるものを以下に列挙します。耳にする機会は少ないと思いますが、参考にしてください。

下痢の原因となる細菌
・大腸菌
・サルモネラ菌
・クロストリジウム菌
下痢の原因となるウイルス
・コロナウイルス
・ロタウイルス
下痢の原因となる寄生虫
・コクシジウム
・クリプトスポロジウム
・線虫
下痢の原因(その他)
・母乳(2等乳)
・消化不良
呼吸器感染の原因となる細菌
・ヘモフィルス属
・マンヘミア属
呼吸器感染の原因となるウイルス
・パラインフルエンザウイルス3型
・牛RSウイルス
・牛ヘルペスウイルスⅠ型
呼吸器感染の原因となるその他の微生物
・マイコプラズマ

感染予防

 子牛の感染症を予防するために最も重要なことは、早期での初乳の給与ですが、ここではワクチン接種や駆虫による方法を紹介します。


 以上代表的なワクチン投与方法の例を示しましたが、ワクチンによっては、授精前や妊娠牛には接種できないものもあります。またこのほかにも有効なワクチンプログラムがありますので、最寄の診療所に相談してみてください。また母牛に投与するワクチンでは、初乳を介して免疫を付与するので確実な初乳給与が必要です。

 続いては、駆虫のプログラムです。子牛は生後すぐ、もしくは母体内において既に寄生虫に感染している可能性がありますので、駆虫することが望ましいと考えられます。特にコクシジウム症の多発牛舎では、移動時の牛舎消毒と駆虫は感染予防に効果的です。

 上記に示しましたのは、駆虫の一例です。他のプログラム、薬品選択等については最寄りの診療所に相談してください。

 ここまで、子牛の感染症対策について①畜舎衛生、②子牛の管理と応急処置、③予防のそれぞれの項目について説明してきましたが、この技術情報を参考にしていただき、子牛の事故(特に消化器、呼吸器感染症)が減少していけば幸いです。