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分娩房を作りませんか

はじめに

 分娩時の子牛死亡事故が多発しています。4月から乳用子牛共済がスタートしましたが、十勝NOSAI全体で、子牛が分娩時すでに死亡していたもの(胎児死といいます)は、4,5月の2ヶ月間で1,703頭に上ります。生後6ヶ月以内に下痢や肺炎などで死廃となった子牛は、同じく2ヶ月間で181頭ですから、実に10倍ほどになります。もちろん、この胎児死には、分娩予定日前の流産や母牛の死廃によるものも含みますが、ほとんどが分娩時に発生したものです。うまく分娩できなかった原因はさまざまで、ここでは全ては述べられませんが、牛舎施設面での解決策のひとつとしてお話しするのが、今回の分娩房です。よく聞く話の中に、繋いだままお産させるよりも分娩房で放っといたほうが勝手に産むし、子牛がダメになることが少ないかな、というものがあります。実際に、分娩房設置後、難産や乳熱などの事故が低減した農家も多いのです。以下のグラフを見て下さい。

 グラフは分娩房設置前後における難産、乳熱などの発生頭数の推移を示します。この牧場では、9月までフリーストール牛舎の一部で分娩させていましたが、難産、乳熱などの発生が目立ちました。土間の分娩房を設置した10月以降難産などの発生はなくなり、乳熱の発生も低減しました。大部分のお産は介助の必要はなく自力でしています。このことは、フリーストール牛舎といえども分娩時には牛の行動が制限され、うまくお産できない可能性があることを示していると思われます。

 多くの酪農家も分娩房があったほうがよいと思っているのではないでしょうか。せっかく妊娠して無事に妊娠期を経たのに、いよいよ生まれるときに死んでしまうのでは、あまりにショックが大きすぎます。場合によっては、親牛もダメになってしまいます。分娩房の利点は、なんといっても親牛が自由な状態で分娩できるというところです。親牛が自由に立ったり寝たり、寝返りをうって向き変えることで分娩は進みます。また、たっぷりと敷き藁が入っていれば、衛生的です。土間であれば、母牛が低カルシウム状態でも起立不能になることは少なく、起立不能になってしまっても四肢の筋肉や神経の損傷は少なくなります。分娩房が目の届き難い場所にあるときは、確かに不安ですが、ほとんどの牛は問題なく分娩してくれます。

 分娩房の広さは、1頭あたり4.5m四方あれば十分でしょう。個別飼いが理想ですが、群飼養でも分娩は可能です。ただ、この場合も1頭あたりの広さは十分とり、飼槽は全頭が同時にゆったり食べられる長さを、水場は待たないでも水が飲める数や大きさを確保して清潔に保ちます。分娩頭数は年間を通して変化しますが、多い時期でも狭くならないように分娩場所を確保するのも重要な点です。

それでは、さまざまな分娩房を示します。

例1

例1は3×4間の手作り分娩房です。飼槽には屋根をかけました。乳房炎予防に麦稈をたっぷり入れています。

例2

例2は乾草置き場を分娩房に改造したものです。3×3.6mあり、横板は取り外せるようになっています。縦横にもう1m余裕がほしいそうです。

例3

例4

例4は立派な牛舎ですが、手作りです。乾乳後期群用で、分娩もこの中でさせています。すべて土間で、飼槽には屋根がかかり、写ってはいませんが屋根に扇風機も設置されています。

例5

例5は、搾乳牛群用フリーストール牛舎のとなりにある乾乳舎です。乾乳前、後期に分けられており、頭数にあわせて仕切りを変えることができます。分娩は、奥の土間でさせています。

 分娩房は農家ごと様々な形になりますが、その有無がもっとも問題となるでしょう。充分な予算があればもちろん話は簡単ですが、コストをあまりかけずに既存牛舎の脇に壁を利用して屋根をかけただけのものでも有用です。牛にとっては繋がれたままお産するより、分娩房のほうがはるかに楽なのですから。