技術情報

プロトセカ乳房炎の防除対策

はじめに

 プロトセカ・ゾフィーは、クロレラに類縁の葉緑素を持たない藻類で、牛に難治性の乳房炎を引き起こすことが知られています。日本では1985年に初めて報告されて以来、散発されてきましたが、いまだ有効な治療法は見つかっていません。

発生及び症状について

 発生はフリーストール牛群に多く発生し、通常は単発で終息するケースがほとんどですが、稀に同一牛群で多頭数の感染に及ぶ場合もあります。感染源は、汚染された地下水、貯水タンク、ホースの水、水たまり、下水溝などで、そこから乳房内へ侵入することで感染が成立します。ストレスなどによる抗病性の低下、不備な搾乳システムの使用、不適切な搾乳手技などによる 乳頭の損傷、汚染環境の継続などが発症の引き金となるといわれています。感染牛は発熱、食不振などの全身症状は示さず、乳房の腫脹、硬結、乳汁中の凝塊などの局所症状のみを呈します(図1-1、図1-2)。

図1-1. プロトセカ感染牛(河合一洋原図)プロトセカ・ゾフィー感染乳房、後乳房の軽度腫脹

図1-2. 感染乳汁(河合 一洋原図)乳汁中に著しい凝塊を認める

診 断

 診断は、乳汁を血液寒天培地、またはペニシリン添加サブロー寒天培地やペニシリン添加ポテトデキストロース寒天培地などの選択培地に塗沫し、37℃で24時間好気培養します(図3)。そしてコロニーをグラム染色し、鏡検することで容易に診断可能です。酵母様真菌の5~10倍の大きさがあり、パックマン状の外殻も観察されます(図4)。

図3. プロトセカ培地(河合一洋原図) 24時間好気培養。プロトセカ・ゾフィーの乾燥した不整形小コロニー

図4. プロトセカ鏡検像(河合一洋原図) プロトセカ・ゾフィーのグラム染色所見、グラム陽性の大小不同の岩のような形、酵母様真菌の5~10倍ある。ピンクの外殻が見える。

対 策

 臨床型乳房炎では、感染牛の乳房解剖所見で著しい肉芽腫性病変を認め、さらにプロトセカの乳房上リンパ節への浸潤も認められることから、臨床症状が出てからでは治療は困難であると思われます。感染分房は大量のプロトセカを含んでいます。万が一臨床型乳房炎が発生した時には、まず感染を拡大しないために感染牛を隔離しなければなりません。感染乳汁だけでなく、感染牛の糞で感染を広げるとの報告もあります。最初は一分房感染と診断されても、最終的には複数分房感染であることが多いので、早期に感染牛を淘汰することが推奨されます。感染牛の発生が複数に及ぶ場合は選択培地を使用して全頭の培養検査を行い、他の潜在感染を摘発することが推奨されます。感染源の特定のために環境から材料を採材し、選択培地により培養を行いますが、通常はなかなか環境から分離できません。地下水を使用している場合は使用を禁止し、牛舎内外の徹底消毒、その他貯水タンク、給水器などの水周りの清掃と塩素消毒を行ってください。特にフリーストール農家は、日頃より牛舎衛生管理を徹底することで予防に努めることが大切だと思われます。プロトセカは臨床型乳房炎に移行する前に長期にわたって乳房内で潜在状態を維持していると思われ、それゆえに早期発見が難しいという特徴があります。しかし、感染牛からはかなりの量の排菌を認め、バルクの生菌数だけを異常に上昇させます(6~8万個/ml)。バルクの温度管理、洗浄に何ら問題がなく、体細胞数もさほど高くないのに生菌数だけが異常に高い場合は注意してみてください。