技術情報

牛の採食行動について

今回は牛の主要な行動である採食行動についてお話しましょう。

放牧牛の1日の行動について

 放牧している牛の1日の行動を調べた結果が以下の図です。およそ80%は採食、反芻、横臥で占められています。牛が飼料を摂取して栄養分を得るためには、採食、反芻、飲水行動をより高める飼養管理が必要になることがお分かりいただけると思います。

参考:㈱デーリー・ジャパン社 ”乳牛管理の基礎”

採食行動と反芻

 本来牛は草地の牧草を食べています。採食の特徴として、牛は上顎には前歯がなく牧草を舌で巻き取り下顎の切歯で切り取って口の奥に送り咀嚼(臼歯ですりつぶす)します。すりつぶす意味としては、牧草の面積を広げ繊維をくずしてルーメン微生物による発酵を容易にするためです。ところで食べた飼料は咀嚼後に第一胃(ルーメン)に送られます。ルーメンに入った繊維類は、口の中に吐き戻され咀嚼されます。これが”反芻”と呼ばれる採食行動です。牛は1日に唾液を100~190Lも分泌します。これはルーメン内の発酵酸産生による環境の変化(pH低下、酸性化)を緩衝させることや多種にわたる微生物の活動環境を安定させるために重要なのです。このように咀嚼や反芻により、より多くの唾液を分泌して牛や微生物に必要な環境を整えるのです。

横 臥

 横臥とは、肢を投げ出し横倒しの姿勢(横臥:lateral lying)と膝を下ろし、胸を起こした姿勢(伏臥:sternum lying)の両者を併せてた行動を言います。横臥は1日概ね7~14時間、1時間程度の間隔で寝返りをくり返します。横臥の持続時間は放牧よりも舎飼いの方が長いそうです。舎飼いが多くなった現在では、牛床の快適性はより重要になります。ちなみにダウナー(起立不能)牛は、しびれを防ぐために4~5分で肢勢を変えるそうです。下画像は火山灰+バークのルーズバーン牛舎とゴムチップ圧縮マットの施工したスタンチョン牛舎の例です。牛が快適に寝ている様子がお分かりですか!”実は両画像の右側の牛”乳熱様横臥姿勢”は快適な寝方を示します。

フリーバーンでの横臥と伏臥姿勢

係留状況での伏臥姿勢

飲水行動

 牛のルーメンは発酵槽です。発酵により沢山の熱を出します。水を飲むことは熱対策でもあるのです。牛は採食と飲水を繰り返します。飲水が制限されることは、採食も制限されることになり、さらには生産性の減少になるのです。1日の飲水回数は平均15回、1回に3.8L~5.7L飲むといわれています(Skidmore)。そのためにも飲水行動を制限しない水槽スペースと数が必要です。以前から水槽の数については25頭に一つ(Parkins)、15~20頭に一つ(伊藤)と言われていますが、当然ながら牛舎施設に可能な最大数にすることが良いと思います。そのためにも適正な頭数管理と群分け及び将来の増頭にあわせた計画的な設置が必要です。画像右下の例では、水槽周囲を含め通路にマットが敷かれています。牛にとって歩行しやすい環境はより飲水行動を起こしやすくする有効な手段です。

様々な水槽

清掃が困難なボール式水槽

飼料が入っているウオーターカップ

清潔な水槽ですがスペース不足に要注意

大型の水槽(周囲のマットに注目!)

 以上のように牛の主要な行動として食べて、飲んで、寝る環境が整っていることは、生産活動、繁殖活動に直結するものです。飼料の栄養濃度にとらわれることよりも与えた飼料をどうのようにしたら十分くい込めることが出来るのか、そのためには主要な行動を抑制する(=ストレスとなる事柄)環境要因を整備することがより効果的で、動物愛護の観点も含めた飼養管理と言える考えられます。自分の牛群についても早速問題点の把握と改善することでより牛たちの能力を発揮させてはいかがでしょうか。