技術情報

尿石症

原因

 尿石(尿結石)の主な成分はリン酸アンモニウムマグネシウムやリン酸マグネシウムなどのリン酸塩です。
 リン(P)含量が高く、カルシウム(Ca)含量の低い配合飼料の給与が続くと、体液中のCa/P比の不均衡によりPやMgの尿中への排泄量が増加し、これらの化学物質は微細な核になる物質を取り囲むようにして結合していきます。この際、核となる微細な物質が尿路系(膀胱や尿道など)の粘膜上皮細胞なのです。
 尿石は脱落した上皮細胞を取り囲んだリン酸化合物なのです。まるで、牛の体でできる真珠のようですね!

黒毛和牛に多い病気?

 尿石を見たことのない黒毛和牛飼養農家はいないほど、尿石症はポピュラーな疾病です。しかし、搾乳牛飼養農家では尿石症を一度も体験したことのない人も多いはずです。この差は、乳牛に少なくて、黒毛和牛に多い病気だからですか?
 答えはNOです。尿石症は雌に少なく、雄に多い病気なのです。正確に言うと、雌は尿道(膀胱から尿の出口までの間)が短く、ほぼ直線なので尿石が詰まりにくく、排尿時の姿勢からして陰毛に触れることなく排尿されるため、尿石が陰毛に付着しづらいのです。
 しかし、雄は尿道が長くS字状に曲がっているために尿石が詰まりやすく、そのために尿が出なくなる症状が見られるのです。また、尿も陰毛で濾されるように排泄されるために陰毛に尿石が付着し易く発見されやすいのです。このため、雄に多く、雌に少ない病気と我々の目には写ります。
 実際には、ホルスタイン種の雄牛にも見られる病気なのです。また、尿石が詰まりやすい要因として早期の去勢(3ヶ月令まで)があります。早期に去勢することで尿路系の成長が止まり、物理的に尿石が詰まりやすくなります。

症状

 陰毛への尿石の付着、尿量の減少により頻繁に排尿姿勢をとって血尿となります。背中を丸めて陰毛がいつも乾いている状態や腹を蹴るなどの動作をしたり、下腹部が腫れてきます。また、息がおしっこ臭い時もあります。
 尿石症牛が1頭でも見つかれば、その牛群における他の牛も尿石症の危険にさらされているはずです。

治療

 尿石の症状が発現している牛には内科的な治療は即効性がないため手遅れです。
 尿石により排尿が困難になった時は、外科的な方法で排尿させなければなりません。すべての症例に外科的方法が適用できる訳ではありませんが、一度、獣医師に相談してみて下さい。

予防

尿石症の原因を取り除くのが尿石症の予防です。

①ビタミンAを投与
 尿石の核となる尿路系の粘膜上皮細胞の脱落を抑えることにより尿石の生成を阻止します。このためには粘膜上皮細胞を保護する働きのあるビタミンAを投与することが有効です。具体的には、ビタミンAやβカロチンを含有しているビタミン剤の供給、また、それらを多く含んでいる飼料の給与(ルーサンペレットやキューブなど)が有効です。
②リンの給与制限
 尿石の主成分であるリンを多く含むエサを控えます。フスマはリンの含有量が多いため、給与を抑えることです。
③カルシウム剤の投与
 尿石の主成分であるリンをカルシウムと結合させることにより尿石(リン酸アンモニウムマグネシウムやリン酸マグネシウム)の発生を抑える効果があります。
④充分な飲水
 陰毛への尿石の付着は春先に発見されることが多いと思いますが、それは寒い冬季間は飲水量が減り尿が濃縮し尿管の中で尿石が形成され、それが春先、暖かくなって飲水量が増えることによって、一気に尿によって押し出されてくるからです。よって、冬季間も充分な飲水ができる環境の整備が必要です。
⑤尿石の融解
 塩化アンモニウム(カウストンなど)を投与することにより,尿のアルカリ化を抑制しpHを下げ、尿石の融解を容易にしますが、即効性がなく、長期間の投与は食欲の減退などを招く副作用があります。


上記のプログラムは塩化アンモニウムの投与を4日給与したあと6日休むといった10日サイクルのプログラムなので投与日を忘れないでできると思います。尿石が気になる人は上記のプログラムを実践してみませんか。

塩化アンモニウム(カウストン)溶液における尿石の溶解実験

A 水道水における浸漬


水道水で尿石の溶解を1週間試みてみましたが溶解しませんでした。

B 塩化アンモニウム(カウストン5%)溶液における浸漬


沈殿してしまうので実際には1%以下の溶液になっている

<室温で1週間浸漬>

<30℃の恒温室で1週間浸漬>

30度の恒温器に入れて3日浸してみましたら、ある程度溶解しました。

予防に勝る治療はない

 経口投与された塩化アンモニウムが生体内でどのような形で尿石と接触するのか分かりません。しかし、少なくとも塩化アンモニウムには尿石を溶解する働きがあることは実証されました。
 何日も溶解に時間をかけられない一刻を争う状況下で生体内の詰まりかかった尿道の中で、今回の実験のように尿石と塩化アンモニウムが充分に接触できることはないと思います。
 したがって、 尿石は治療より予防です。