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分娩間隔の延長した乳牛にみられる代謝プロファイルテストの特徴と繁殖向上のポイント

 産前産後の飼養管理が乳熱、脂肪肝などの周産期病や四変の発生、その後の繁殖成績に影響を及ぼすことはよく知られています。十勝NOSAIが行っている代謝プロファイルテスト(血液検査のことです)の結果から、分娩間隔の延長した乳牛にみられる泌乳初期の特徴と繁殖成績向上のために注意したい飼養管理のポイントを述べます。なお、このページの内容はデーリィマン 2006年5月号 にも掲載されています。

 代謝プロファイルテストを実施した乳期の分娩間隔が420日(十勝管内における乳検成績の平均値)未満(通常群)と420日以上(延長群)の2群に分けて、分娩後16週まで結果を比較したところ、以下のことが認められました。

 図1は、乳牛の太り具合を数値化したボディーコンディションスコア(BCS)を比較したもので、分娩間隔の延長群は通常群に比べて分娩後4週目頃まで痩せていることがわかります。

図-1 ボディーコンデションスコア(BCS)の比較

 また、エネルギーの摂取状態を示す血糖値は、延長群では分娩後5週目頃まで低下しています。(図2)

図-2 血糖の比較

 延長群で、血糖値の低下する時期に、エネルギー不足を補う体脂肪動員の程度を示す遊離脂肪酸が著しく上昇していることがわかります(図3)。

図-3 血清遊離脂肪酸の比較

 さらに、延長群では分娩後6週目頃まで急性の肝臓障害を示すGOTが上昇しています(図4)。これは血液中に増加した遊離脂肪酸の処理のため、肝臓が大きな負担を受けている結果と考えられます。
 このように、分娩間隔の延長した個体は、分娩前後の採食低下が原因と考えられるエネルギー不足から、泌乳初期に痩せてしまっていることがわかります。さらに肝臓の急性障害が加わるため、繁殖成績に悪い影響を与えています。

図-4 血清GOTの比較

以上の結果を踏まえて、泌乳初期のエネルギー不足を防ぐため注意したい飼養管理ポイントを述べます。

①乾乳期も採食量を落とさないこと

 泌乳初期の採食量を上げるためには、乾乳後期から刈り遅れではない栄養価の高い牧草給与を行い、乾物摂取量を高めておくことが大切です。もちろん泌乳初期にも同様の牧草を給与しましょう。また、過肥牛は大量の内臓脂肪がルーメンの容積を制限して、分娩前に採食量が低下しやすいので注意が必要です。また、乾乳後期の馴らし給与を十分にして、分娩後の食い止まりを防ぐことも重要です。

②飼料給与は十分にすること

 飼槽を空っぽにしないように、いつでも食べることのできる十分な粗飼料の給与が重要です。これはTMR給与の牛群にも当てはまります。いくら立派な設計をしていても、腹いっぱい食べられないのでは問題外です。

③消化障害を防いで食い止まりを防ぐこと

 消化障害は、分離給与の場合では分娩後の濃厚飼料の増給ペースが速すぎることで起こります。乾乳後期の馴らし給与が確実に行われている場合では、1日あたり250~300g程度ずつの増給で、濃厚給与量のピークを分娩後30~40日程度にもって行けば消化障害を防ぐことができます。また、1回の濃厚飼料給与量は3Kg程度を上限にして(ビートパルプも配合と同様に濃厚飼料と考えます)、給与間隔は3~4時間あけることも大切です。
 TMR給与の場合では、反芻のためにルーメンの刺激になる有効繊維がTMR中に足りないと消化障害を起こし易いです。また、飼槽のえさ押し回数の不足による極端な選び食い(えさ押しは1日5~6回行いましょう)や搾乳施設への呼びえさや自動給餌機による濃厚飼料の別給与も消化障害の原因になります。

④カルシウムを充足させること

 周産期病の重大な原因となる分娩前後の低カルシウム状態を防ぐために、泌乳期におけるカルシウムの十分な蓄積が重要となります。泌乳期の給与飼料の乾物中濃度でカルシウム0.7%以上、マグネシウム0.25%以上は必要です。これは、一般的なミネラル剤であれば最盛期まで(分娩後110日程度まで)は1日1頭当たり200g、中期以降では100gの給与におおよそ相当します。

⑤安楽性を高めること

 マットや十分な敷き量で牛床を快適にすること、削蹄、脚浴による肢蹄の適正な管理、十分な広さの清潔な飲水施設などが求められます。

 繁殖成績の低迷と一口に言っても、その状況は牛群ごとに異なり、また、その原因も多様で、ひとつの原因から起こるわけでもありません。でも、乳牛の栄養配分の優先順位は、生体維持、成長、泌乳、体脂肪蓄積、そして最後に繁殖といわれる通り、飼養管理の面から繁殖成績を改善していくためには、えさが足りない、足りているが食えない状況がないかどうかを常に点検していくことが必要です。