技術情報

第四胃変位発生と乾乳期における代謝プロファイルテスト

 十勝の酪農において、乳量増加により周産期病である乳熱の発症、第4胃変位手術(各年度の当初共済加入成乳牛頭数に対する発症および手術頭数の比率)が増加している(図-1)。多くの酪農家にとって高泌乳量で生産性を高めた上で疾病を低減することが経営上重要なことである。今回、十勝NOSAIが行っている乳牛の代謝プロファイルテスト(MPT)の成績から、第4胃変位の原因を考察したい。
 なお、このページの内容は、デーリィマン 2006年4月号 にも掲載されています。

図ー1 年間乳量と第4胃変位手術率および乳熱発症率の推移

 乳牛の太り具合を数値化したボディーコンデションスコア(BCS)において、第4胃変位手術牛群は正常牛群と比較して乾乳の始めから太っており、分娩が近づく6週目から低下している(図-2)。

図-2 ボディーコンデションスコア(BCS)の比較

 血糖においても同様な傾向が見られ(図-3)、エネルギーの不足のため血糖の減少に続く体脂肪の動員を示す遊離脂肪酸の増加が分娩の近づく7、8週目に著しく増加した(図-4)。

図-3 血糖の比較

図-4 血清中遊離脂肪酸の比較

 乾物摂取量を示す血清中のマグネシウム値が分娩直前の8週目で著しく低下していることから飼料の採食低下が起きていることが認められた(図-5)。

図-5 血清中マグネシウムの比較

乳熱の血液所見ともなる血清中のカルシウム値も分娩が近づく7週目から低下していることがわかる。(図-6)

図-6 血清中カルシウムの比較

このことから、乾乳期に入った時に太っていた牛に第4胃変位の発生が多いことがわかった。どの牛も周産期には、通常の飼養状況下でも分娩が近づくにつれて胎児が大きくなって子宮の圧迫により第1胃容積の減少やストレスなどで採食量は低下する。特に太った牛についてはかなりの栄養濃度が必要とするので採食低下が起きると深刻なエネルギー不足が起きることがわかる。エネルギー不足が起きると血糖の低下が見られ、血液中の血糖を維持するために肝臓中のグリコーゲンをエネルギーとして利用するが、それが枯渇すると筋肉中のアミノ酸が動員されて肝臓で血糖を作りだし(糖新生)、また、体脂肪から遊離脂肪酸が血中に放出されて肝臓でケトン体となり体のエネルギーとして利用される。血中のケトン体が多くなるとケトーシスとなりやすく、肝臓で処理しきれないほどの脂肪によって脂肪肝となり肝機能に負担がかかる。このような状態で分娩を迎えると、採食低下による第1胃容積の縮小と胎児娩出後の妊娠子宮が退縮することで腹腔内に隙間ができて第4胃が自由に移動することができ、粗飼料不足や濃厚飼料の過剰給与などによる要因で第4胃にガスが貯留して第4胃変位が発生する。
 以上をまとめると、採食低下によるミネラル不足、エネルギー不足とそれを補うための筋肉中のアミノ酸放出による筋力低下などで乳熱、ダウナー症候群、第4胃変位などの周産期病が起きると考える。