Q&A_牛の乳房炎 of tokachi_nosai

牛の一般疾病

Q1:抗生物質を使っていない牛や出荷制限期間が過ぎた牛の生乳検査で、抗生物質の反応が出ることがありますがどうしてですか? また、対処法はありますか?
抗生物質以外で陽性反応が出る原因のひとつとして、ラクトフェリンという物質の関与があります。ラクトフェリンは主に生乳中に含まれる蛋白質の1種で、初乳や乳房炎乳には常乳より多く含まれており、乳房内での病原菌の感染を抑制する働きがあると考えられています。対処法として、強肝剤等が有効という報告がありますが、これらの薬剤にも出荷制限期間が設定されていますから、獣医師と相談して使用してください。


Q2:黄色ブドウ球菌(SA)に感染した牛の対処法は?
黄色ブドウ球菌(SA)は、乳房炎の原因菌の中で難治性の乳房炎を引き起こすことでよく知られており、感染乳汁から搾乳者の手、ミルカー、タオルなどを介して他の牛にうつることから伝染性の細菌といわれています。したがって、SA感染牛は感染の拡大を防ぐため、搾乳を最後にし、適切な対処を行うことが重要です。前産に感染歴がなく、また乳汁にブツや乳房にしこり、乳頭に傷を認めない場合は、3日間、抗生物質の全身投与も併用した泌乳期治療を行います。また、症状を認めた場合は乾乳期まで別搾りし、乾乳時に同様の治療をします。しかし、慢性化した牛や複数分房感染は、治癒が困難のため淘汰の対象とすべきです。詳しくは最寄の獣医師にご相談ください。


Q3:乳房炎の乳汁を細菌検査したら、カビ(酵母様真菌)といわれました。抗生物質は効果がないそうですが、どのような治療がありますか?
カビ(酵母様真菌)による乳房炎には、一般的に頻回搾乳が行われています。 生理食塩液で希釈したヨード剤の乳房内注入も効果がある場合がありますが、この場合は、必ず獣医師の指導のもとで行ってください。一般にカビは環境中に多数存在していますので日和見感染の場合が多いといわれています。特に食欲不振や発熱がないようでしたら頻回搾乳で経過をみるのも良いでしょう。


Q4:前搾りが必要な理由は?
前搾りには4つの意味があります。① 搾乳前の乳頭に溜まっている異常乳を排泄する。② 乳頭口の通りを良くする。③ 異常乳の早期発見ができる。④ 乳頭に搾乳刺激を与える。
前搾りは乳頭清拭の前に行い、乳頭の付け根をしっかり握って1乳頭4回ずつ行うことで射乳ホルモン(オキシトシン)の分泌を促します。また、前搾り後60~90秒後にライナーを装着することで、泌乳生理にあった搾乳が可能となり、短期間に多くの乳を搾ることができるようになります。このことは、牛に対する搾乳の負担を軽減することにもつながります。


Q5: ライナースリップを減らすためには、どうしたらよいのですか?
ライナースリップの原因には次のことが考えられます。① ライナー装着前の乳頭が濡れている場合。② 乳頭に対して極端に大きいボアのライナーを使用している場合。③ 搾乳に必要な真空度が極端に不足している場合。④ 過搾乳になっている場合。
特に良く見られる原因は、①のライナー装着前の乳頭が濡れている場合で、搾乳後、不用意にライナーから生乳をたらさないこと、ライナー装着前の乳頭をペーパータオルでよく拭き乾燥させることが重要となります。



Q6:乳汁の肉眼的性状で乳房炎の原因菌が判断できますか?
細菌培養検査をしないで乳汁の肉眼的性状だけで乳房炎の原因菌を特定することは難しいですが、以下のような傾向が見られます。
  •   局所および全身症状 乳汁性状
    黄色ブドウ球菌(SA) 発熱、乳頭口の傷、あれ 乳白色
    大腸菌群(CO) 
    発熱、食欲廃絶、皮温低下、蹌踉
    水様乳 
    起立不能、眼結膜充血、下痢
    その他の連鎖球菌(OS)
    発熱、食欲減退
    乳白色~水様乳
    アルカノバクテリウムピオゲネス(AP)
    乳頭口の傷、あれ  腐敗臭乳 
  • (但し、症状は必須条件ではありません)


Q7:ブツが少し出ているだけですが、乳房炎軟膏を使ったほうがよいのですか?
症状が軽い場合は、頻回搾乳(通常の搾乳回数の2倍以上)を行って様子をみるのもよいでしょう。乳線組織内に停滞している細胞の死骸などの炎症性産物や細菌毒素を排出することで症状が緩和され、治癒する場合もあります。乳房が腫れてきたり、熱感がある場合には、獣医師に相談してください。


Q8:乳汁の細菌検査結果にあるコンタミとは?
コンタミとは、コンタミネーション(Contamination)を省略した表現です。検査結果がコンタミとなっている場合、検体が汚染され雑菌が多く混入し、乳房炎の原因となっている菌が明確に判断できないことを意味しています。多くの場合、コンタミは乳汁検体の採取時に起きてしまいますが、以下の手順で行うとかなり防ぐことができます。①乳頭についた汚れをペーパータオルなどでふき取る。②最初の2~3搾りをカップなどに捨てる。③アルコール綿花で乳頭口を消毒する。④異物が入らないように、出来るだけ容器を横にして採取する。また、容器を乳頭に接触させたり、容器のフタに触れないようにする。⑤採取後は、必ずディッピングをする。



Q9:乳房炎軟膏は1日に2回入れなくても大丈夫ですか?
乳房炎軟膏に含まれる抗生物質にはいろいろな種類があり、その作用の仕方にもそれぞれ特徴があります。抗生物質の効果は濃度や時間経過によって変化はありますが、一度にたくさん注入したり、1日に何回も注入すれば効果が上がるわけではありません。いずれの乳房炎軟膏も、その効果が十分発揮されるように製造されていますので、乳房炎軟膏の注入は1日1回で大丈夫です。乳房内でよく拡散させるために、搾乳後に注入しましょう。