Q&A_牛の繁殖 of tokachi_nosai

牛の一般疾病

Q1:JMRについて教えてください。
JMRの概念は1987年にカナダの研究者により開発され、その後に様々な改良を経て、現在、コンピューターソフトに組み込まれたりして牛群の繁殖管理に応用されています。
JMRはフランス語のJours(日数)・Moyen(平均)・Retart(遅延)の略であり、直訳では平均遅延日数となります。分娩した牛が、一般的な生理的空胎期間(初産牛80日、経産牛60日)を越えても受胎しない日数をペナルティ日数とよび、このペナルティ日数の平均がJMRです。つまり、JMRが40とは、この牛群が生理的空胎期間の後、平均40日で受胎しているということを示します。
このようにJMRを計算し、毎月の数値の動きを追うことにより、現時点での牛群の繁殖状態を把握し、また、数値目標を立てることができるのです。


Q2:繁殖で定期的に診てもらっているし、注射も何頭もしてもらっているけどなかなか発情がわからないのはどうしてですか? 
発情がわからない原因は様々で複雑です。注射は一つの手段に過ぎません。その前に分娩前後の飼養管理や牛へのストレスとなる要因はないかチェックして見て下さい。さらに発情発見のための観察時間が朝晩とれているかも見直してください。


Q3:発情の初期に人工授精した方が雌の生まれる確率が高い?
アメリカのミシガン州立大学の研究発表で人工授精のタイミングが雌雄の比率に影響することが報告されています。Y染色体をもった精子(Y精子)の子宮内での生存時間はX染色体をもった精子より短いため、排卵までの時間が長いとY精子数が少なくなり、X染色体で性別が決定される雌の確率が高くなるということです。実際は発情初期かどうかや排卵のタイミングは判りません。また、これは試験研究段階であるとのことです。


Q4:牛は受胎すると乳量が落ちるのはなぜか、落ちない牛も時々いるのはなぜですか?
妊娠5ヶ月ぐらいから胎盤で産生されるホルモンが増加していくことと胎児が成長していくための栄養が増加していくので乳量が落ちていきます。ただ、高泌乳牛になると泌乳を維持するホルモンがこれらにあまり影響されないで分泌され、乾物摂取量も通常の基準を超えて多いことで乳量が落ちないようです。


Q5: 人工授精してから、1週間または10日で発情回帰することがあるのはなぜですか?
正常な発情周期では排卵後1週間または10日で黄体が形成されます。一つの発情周期の中でも小さな卵胞が1週間または10日で出来る周期があります。黄体が充分に形成されないとこの小さな卵胞が大きくなり発情徴候を見せることがあります。原因は頭の中にある視床下部から放出されるホルモンの障害で、これはストレスやエネルギー不足などで引き起こされます。


Q6:牛の後産(胎盤)は取った方がいいの?
後産は極力取らない方が良いでしょう。無理に後産を剥がすと新たに損傷が起きたり、細菌に感染しやすくなり、子宮筋炎や子宮外膜炎を起こして繁殖に影響を及ぼす恐れがあります。後産が気になるようなら、飛節のあたりで切ってしまいましょう。


Q7:流産が続いたのですが、ネオスポラの疑いは?
牛の流産の原因は様々で、ネオスポラ感染もそのひとつに過ぎません。流産の時期は妊娠3~8ヶ月、平均5.5ヶ月です。原因は原虫で、犬、キツネが媒介する水平感染と、親から子に移る垂直感染があります。もし、心配で検査を希望されるなら、流産した母牛の血液と流産胎児を家畜保健衛生所へ持ち込んで調べてもらうことになります。残念ながら効く薬剤はありません。感染牛の淘汰と犬やキツネが牛舎に入らないようにすることが対策です。


Q8:牛の妊娠期間は何日ですか?
個体により差がありますが、ホルスタインで約280日、黒毛和種で約285日です。和牛の方が5日くらい長いです。


Q9:何回も授精して妊娠しない牛(リピートブリーダー)に授精後11日目でGnRH製剤(ホルモン剤)を注射しているが、妊娠する牛もいるが多くは妊娠しないのはどうしてですか?
リピートブリーダーの原因は特定することが難しいので、処置のひとつとしてホルモン剤を注射しています。一つの性周期の中にも10日ぐらいで小卵胞が発育する小さな周期があり ます。この小卵胞を黄体化させ、妊娠を維持する黄体ホルモンのレベルを保ち、早期胚の死滅を防ぐ目的で授精後11日目でGnRH製剤を注射することがあります。リピートブリーダーや繁殖障害の大きな原因に牛のストレスや栄養バランス(エネルギーと蛋白のバランス)があります。リピートブリーダーの処置も個体により様々で、その都度獣医師に相談するとともに、今一度飼養管理のチェックを獣医師や関係機関と検討して見て下さい。


Q10:受精卵雌雄判別方法の手技とは?
受精卵(胚)の一部を切断し雄と雌の遺伝子DNAの配列の違いをPCR法やLAMP法という遺伝子診断技術で判別します。ただし、100%診断が当る訳でもなく、現在も精度を上げるための努力がされています。また、受精卵移植は受精卵(胚)のランクが受胎に影響するため、ランクによっては、検査時点で胚の一部を切断することで、受胎が期待できなくなることもあります。受精卵雌雄判別方法はこういう課題もあることを理解してから利用を考えてみて下さい。


Q11:繁殖台帳に書かれている「F]、「CL]、「OV」というのはなんですか?
「F]はfollicle(卵胞)、「CL]はcorpus luteum(黄体)、「OV」はovulation(排卵)の略号です。卵胞(F)の中には卵胞液や卵子が含まれています。乳牛の場合、発情終了後に排卵(OV)が起き、卵胞から卵子が放出されます。その後、排卵された卵胞部分にリンパ液や細胞が満たされ、黄体(CL)が形成されます。直腸検査では、卵巣にある卵胞(F)や黄体(CL)を触診します。


Q12:PGとは、どんな薬ですか?
PGとは、プロスタグランジン(prostaglandin)の略称です。プロスタグランジンはある種類のホルモンの総称であり、その作用は多種多様ですが、生殖器系に関係が深いのはPGF2αとPGE2αです。繁殖の分野で用いられるPG製剤の作用は主に黄体退行と子宮収縮です。非妊娠時の黄体期に用いれば発情誘起することができますし、妊娠時に用いれば人工流産や分娩誘起することができます。また、子宮蓄膿症や胎盤停滞にも投与されます.。


Q13:分娩分娩してしばらく経ちましたが、発情が分かりません。診療を受けるのは、分娩後どのくらい経ってからが良いのでしょうか?
分娩後には生理的に発情、排卵が起こらない時期があるので、家畜共済の診療指針では、分娩後40日以内の無発情は異常ではないとされています。通常、分娩後20~30日くらいに初回排卵は起こるのですが、この際は発情を伴わないか弱いため、外部からの観察では分からないことが多いと思われます。したがって、分娩後40日を経過しても発情を発見できなかった牛について診療を依頼するのが良いでしょう。