2011_繁殖成績改善への近道 of tokachi_nosai

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繁殖成績改善への近道

 酪農経営上、繁殖成績の向上は多くの利益をもたらします。日頃、皆さんも繁殖成績改善に取組んでいると思いますが、実際には何をどのようにしたらよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか?今回、経産牛を中心に効率的な繁殖成績改善の方法を検討してみましたので参考にしてください。

 

 繁殖成績改善も他の乳質改善などと同様の流れになります。まず、目標を設定し、次に現状の分析と問題点の提起、そしてその問題点を解決する対策をとり、繁殖成績を見て現状をチェックします。目標に達していなければその繰り返しです。
 以下、この流れに沿って説明していきます。
 

1.目標の設定

 現在は乳量や泌乳生理、子牛生産などの観点から、分娩間隔は395日程度が最適であると言われています。分娩間隔を395日にするには空胎日数を115日以内にする必要があります。従って、繁殖成績の目標は、空胎日数115日以内にすべきです。
 

何が重要か…

 
image006.gif図A では、空胎日数を短縮するために重要なことは何でしょうか?
 ここで、分娩から次の分娩までの流れを見てみましょう。(図A参照)

 
 このように、空胎日数を短縮させるには初回授精日数と授精期間の両方を短縮させる必要があります。(図B参照)
 以上から、空胎日数短縮のためには、初回授精日数、受胎率、発情発見率が重要であることがわかります。一般的な繁殖成績の目標値は次の通りです。(図C参照)
 
image007.gif図B   image010.gif図C
 

2.現状の分析と問題点

 日頃繁殖検診をしていて次のような言葉をよく耳にします。みなさんにも心当たりがありませんか?

1.発情がこない
2.発情がはっきりしない
3.とまりが悪い(授精回数が多い)

 皆さんはこのような事をそのまま受け流していませんか?実は、これらには次のような問題点の重要なヒントが隠されています。

1. 初回授精日数が延びています。原因は無発情と発情見逃し(発情発見率の低下)です。
2. 発情見逃し(発情発見率の低下)が起こっています。
3. 受胎率が悪くなっています。

 次の質問に答えてみて下さい。

4. 検診時、妊鑑した牛の何割がとまっていますか?
5. 2回以上授精している牛の平均授精間隔は?
6. 3回以内の授精で何割がとまっていますか?

 これから、次のようなことがわかります。( 図D、E、F参照)
 このように、日常の現象を見逃さず、何が起きているのかを探る事が重要です。そしてそのほとんどが発情発見率と受胎率の低下が原因であることがわかります。
 
image013.gif図D   image015.gif図Eimage017.gif図F

3.対 策

 前述のように発情発見率と受胎率の低下によって初回授精日数や授精期間が延長することがわかりました。従って長期空胎の個体に対して発情発見率や受胎率をあげるような対策をとらねばなりません。
 

1. 長期空胎牛のリストアップ

 まず以下の牛をリストアップして、早急に対策をとるべき牛をはっきりさせる事が重要です。

分娩後70日以上の未授精牛
分娩後95日以上の授精中牛
3回以上授精している牛

なぜ、70日と95日なのか?

 通常分娩後40日くらいまでに初回発情が来て60〜70日で初回授精を行えます。従って70日で授精ができていない牛はできるだけ早くに対策をとる必要があります。また、分娩後95日以上経過している牛は次回発情で目標空胎日数を超える可能性があるので要注意です。さらに3回以上授精している牛も授精障害などにより授精期間が長引く可能性があり注意が必要です。図1のようなリスト表を作れば便利ですが、分娩後2ヵ月半を過ぎて未授精の牛と3ヵ月を過ぎて授精中の牛を繁殖台帳から拾うことは簡単にできるはずです。

 図1 注意牛リスト(経産)  
                       
   S牧場      分娩後 70 日以上未AI牛          
          95 日以上AI中牛   ソート順  名号    
未授精(不受胎)牛 授精中牛 3回以上授精未受胎牛
 名号 分娩日   空胎 名号   最終AI  回数  実空胎  AI予定 名号  最終AI 回数   実空胎  AI予定
349  5/14 251 276 12/21 3  178 2/1 276 12/21 3 178 2/1
363  7/2 202 305 11/30 4 235 2/1 305 11/30 4 235 2/1
365  11/5 76 308 12/14 5 292 1/25 308 12/14 5 292 1/25
370  10/23 89 309 1/11 7 384 2/1 309 1/11 7 384 2/1
404 10/19  93 344 12/14 1 68 1/25 377 1/11 3 202 2/1
408 3/17  309 376 11/30 2 148 2/1 408 11/23 5 309 -

 

2. 発情発見率、受胎率の向上

 リストアップした注意牛に対して重点的に対策をとる必要があります。
 

a. 発情発見率をあげるには?

 発情発見率をあげるには、なんといっても的確な発情観察です。推奨されているのは1回30分で1日4、5回の観察です。しかし、実際には難しいと思いますので実践的な観察法を図2に示します。また、繁殖カレンダー(図3)や、運動を行っている場合にはヒートディテクター(尾根部のシール)なども有効です。

図2
実践的発情発見法
1回20~30分で以下の時間に2回 
フリーストール 朝の搾乳前と夕方の搾乳後
繋ぎと運動場 朝の搾乳後と夕方の搾乳後
繋ぎ牛舎 朝の搾乳前と夕方搾乳後遅く

図3




       
  ’10年1月              
  授精予定
1(金)  
2(土)  
3(日)
4(月) 308  344  513  611  622  636  735  838  843 
5(火)  
6(水)  
7(木) 833  835
                   
1/1 1/2 1/3 1/4 1/5 

  1/20 1/21
  152 451   234     296  
  368        
1/22 1/23 1/24 1/25 1/26     2/10 2/11
      189         438
      582        

 

b. ホルモン処置

 発情発見率、受胎率をあげるためのホルモン処置を図4に示しましたので参考にして下さい。色々な処置がありますので自分にあったものを見つけて試してみてください。
 図5に対策の簡単なフローチャートを載せておきます。
 月に一度は繁殖検診を受け、VWP(分娩後授精開始をする時期、通常は50〜60日)を過ぎた未授精牛のチェックや妊娠鑑定を行ってください。特に分娩後70日を過ぎた未授精牛に対しては、授精できるまで2週間おきの受診をお勧めします。

図4
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図4-1
(参考)ホルモン処置の妊娠率
PG 20.1%(59/287)
CIDR-Synch 58.3%(67/115)
授精時GnRH 44.4%(28/63)

図5
image004.gif
 

3. 繁殖成績を見て現状をチェック

 対策を取った後は繁殖成績で現状をチェック(できれば毎月)しましょう。ここで、何を指標にしたらいいのかという事が問題になります。空胎日数や受胎率を目標にした場合、それらで現在の状況をチェックするのが普通です。しかし、ここで注意が必要です。空胎日数は受胎牛のみの成績で、決して牛群全体を現しているものではありません。

何を見ればいいのか?

 次の2項目を指標にしてみてください。

1.未受胎牛の85日以内授精率
2.受胎牛率

 1は、VWPを過ぎてまだとまっていない牛のうち、85日以内に授精した牛の割合です。繁殖台帳で受胎していない牛のうち、分娩後約3ヵ月以内に授精している個体を数え、それを分娩後約2ヵ月以上経っている牛の総数で割れば簡単に出す事ができます。
 2は牛群全体に対するとまっている牛の割合です。妊娠確定している牛の数を牛群全体の数で割ったものです。
 授精率と受胎牛率に関して詳しくは図6を見て下さい。
 これらは計算も簡単でわかりやすく、リアルタイムに牛群全体を現す数値であり、現在の繁殖成績としても、目標としても使える数値です。空胎日数は現在の繁殖成績というよりはむしろ目標値として使う方がいいでしょう(年に数回は目標達成確認のため空胎日数のチェックも行って下さい)。

図6
image009.gif
図6-1
image012.gif
 

おわりに

 図7に前述してきたことをまとめてありますが、今まで述べてきた事はあくまでも健康な牛に対しての事です。疾病や多くのストレスがある牛にホルモン処置をしても効果は期待できません。繁殖成績改善と同時に牛を健康に保つ努力をしなければならない事を忘れないで下さい。

図7
  繁殖成績改善への近道
  1. 注意牛のリストアップ
  a. 分娩後70日を経過した未授精(妊-)牛
  b. 分娩後95日を経過した授精中牛
  c. 3回以上授精している牛
  2. リストアップ牛に対して重点的に対策
  a. 注意深く発情観察
  b. ホルモン処置
  3. 繁殖成績で現状チェック
  a. 85日以内授精率(目標80%以上)
  b. 受胎牛率(毎月60%前後)


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