2007_分娩時の胎児死亡事故を防ぐために of tokachi_nosai

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分娩時の胎児死亡事故を防ぐために

 分娩時の胎児の死亡事故が依然多発しています。家畜共済では、分娩時にすでに胎児が死亡していた事故を「胎児死」と呼んでいます。難産や子宮捻転などの母牛事故に伴い死亡してしまうこともありますが、分娩に気付かずに死亡した胎児を発見したケースがかなりあるようです。


 そこで、乳牛の胎児死について、十勝NOSAIでは2005年度にアンケートを実施して、その発生に影響する要因を調査しました。その結果、胎児死の多い牧場は、①農作業従事者一人当たりの成乳牛飼養頭数が多い、②分娩場所で同居している頭数が多い、③分娩にあまり立ち会わないという傾向があり、「分娩に目が届かない」ことが胎児死発生に強く影響していることが確かめられました。また、胎児死の多い牧場の3割以上が、死亡事故が少ないと思っていることも明らかとなり、意識の問題も浮上してきました。このアンケート結果については、十勝NOSAIのホームページと広報誌(2005年11月号)で報告しています。
 さらに、2006年度には難産による胎児死を防ぐために、分娩介助のタイミングについてもホームページに掲載しました。
 今回は、胎児死対策シリーズの3回目として、乳牛の胎児死に影響を与える飼養管理を具体化するために牧場で聞き取りした結果を報告します。
 聞き取り項目は、「①分娩監視に関すること、②乾乳牛の飼養管理に関すること、③精液の選び方に関すること、④その他の各項目で気をつけていること」であり、2004および2005年度の年間分娩頭数がそれぞれ30頭以上だった組合員のうち、両年度の胎児死発生率が3%未満だった低被害組合員(31戸)で行いました。また、両年度の胎児死率が15%以上だった高被害組合員(38戸)についても、上記の4項目について現状を聞き取りしました。
 聞き取り実施牧場の概要を表1に示します。低被害の組合員は高被害の組合員に比べて成乳牛の飼養頭数や分娩頭数が半分程度ですが、胎児死発生率は10分の1以下となっており、高被害の原因に飼養規模だけでは片付けられない問題が潜んでいることをうかがわせます。

表1 聞き取り実施牧場の概要


低被害組合員 高被害組合員
調査戸数(戸) 31 38
2004年度 当初引受頭数の平均(頭) 68.4 119.1
分娩頭数の平均(頭) 48.7 94.0
胎児死発生率の平均(%) 1.5 18.4
2005年度 当初引受頭数の平均(頭) 67.5 121.4
分娩頭数の平均(頭) 48.8 94.6
胎児死発生率の平均(%) 1.3 18.7

それでは、聞き取り結果について示します。

1)分娩監視に関すること

被害の少ない組合員では、

  • ①分娩の近い牛を目に付きやすい場所で飼養
  • ②分娩があることを意識している
  • ③牛を何回も見に行く
  • ④分娩監視システムの利用
  • ⑤お産には立ち会う

image1.jpg写真1 牛舎に隣接して目の届きやすい分娩房などがあげられました。
 被害の多い組合員では、自宅と牛舎が離れていて牛を見るのが難しい、作業が忙しくて見に行けない、分娩をあまり意識していないなどの状況がありました。
 「分娩に目が届くこと」とは、「分娩牛を楽に観察できる状況をつくること」です。毎日の農作業で頻繁に行き来する場所の傍らに分娩牛がいると、意識しなくとも目に入ってきます。分娩牛をわざわざ見に行く作業は、多忙な酪農家にとって負担が大きいようです。




2)乾乳牛の飼養管理に関すること

被害の少ない組合員では、

  • ①分娩が近くなったら分娩房で飼養する
  • ②良質牧草の飽食など十分な採食に注意している
  • ③何らかの乳熱対策をしている

image2.jpg写真2 良質牧草の飽食などがあげられました。
 被害の多い組合員では、牧草の品質が悪くて採食が低下している、十分に飲水できない、過密な場所に飼養している現状がありました。
 乾乳後期(分娩予定日の21日前から)に母牛が採食・栄養不足、低カルシウム血症であると難産になりやすく、胎児の死亡事故に結びつくことが多くなります。また、分娩は母牛が自由な寝起きをすることで進んでいくので、不自由な繋留状態や過密な場所での分娩はスムーズに進まないことが多くなります。胎児死を防ぐためには、母牛の管理も非常に重要になります。なお、乾乳後期の具体的な飼養管理や分娩房についてもホームページに掲載されています。


3)精液の選び方に関すること

 被害の少ない組合員では、

  • ①未経産牛の授精では分娩難易度に注意している
  • ②未経産牛には和牛を授精している

などがあげられ、過大児による難産に注意していることがわかりました。

4)その他のこと

 被害の少ない組合員では、

  • ①分娩介助の準備(お湯、牽引ロープ、滑車などの用意)が良い
  • ②初産牛の分娩には特に注意している
  • ③分娩予知(乳房の張り、尾根部の靭帯の緩み、分娩が近いことによる採食低下等)をしている

などがあげられました。分娩予知については経験が必要で個体差もありますが、分娩が近いことを判断するには有効な方法です。

image3-1.gifimage3-2.gif







写真3 尾根部靭帯の緩みによる分娩予知
(左:分娩3日前の靭帯には緩みは見られない。右:分娩当日の靭帯はかなり緩み、落ち込みが見られた。)

 今回の聞き取りから、分娩時の胎児死亡事故を防ぐための注意点が具体的に見えたと思われます。この注意点は冒頭で述べた飼養規模だけでは片付けられない問題そのものであるとも言い換えることができるでしょう。あなたの牧場に合った事故対策のヒントをこの中から見つけ出して、ぜひ実行してみてください。




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