2002_分娩前後の馬の飼養管理について of tokachi_nosai

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分娩前後の馬の飼養管理について



はじめに

0205-1.jpg 馬の生産者にとって一年で最も忙しい時期になりました。子馬が母馬に寄り添い一生懸命哺乳している姿は本当に微笑ましいものです。でもそんな微笑ましい姿も、出産前後から数ヶ月間のちょっとした油断で大きな事故に結びつくことが多々あります。今回は馬のお産の前後と子馬に対して注意しなくてはならないポイントについて述べてみたいと思います。


分娩前

0205-2.jpg 妊娠中の母馬は妊娠末期の約3ヶ月で急激に体重が増加します。これは胎児の発育に伴うもので、この時期の飼養管理は最も注意が必要です。またこの時期は大きくなった妊娠子宮が腸管を圧迫するためちょっとした飼料の偏りや変化が疝痛(消化不良)を起こしやすい時期ともいえます。良質な乾草と穀類、ミネラルやビタミン(特にビタミンE)等を給与する必要があります。またこの時期は最も肥満になりやすい時期でもあり、また肥満は難産や分娩後の繁殖に悪影響を与えます。肥満を防止する上でも穀類の過剰給与には注意が必要です。運動不足にはなっていませんか?分娩前の適度な運動は非常に重要です。過肥の防止はもちろんのことですが、胎児の正常な発育にも重要な意味を持っています。最近の帝王切開の症例のほとんどが胎児の発育異常によるものです(頚部の拘縮等妊娠末期の発育異常)。これは妊娠末期の運動不足が大きな要因となっていると考えられます。

分娩

 馬の妊娠期間はおおよそ335日間と言われています。分娩予定日は種付け月日の一ヶ月前となります。予定日はあくまでも予定であって日頃の乳房の観察等は注意が必要です。分娩が近くなると乳房の腫脹、特に乳頭にヤニが付いたり、射乳等おおよその予測は可能ですが、正確な予知は非常に難しいところです。注意していただきたいのは分娩予定数ヶ月前にこのような乳房の変化が現れることがあります。双子であったり何らかの胎児異常である場合があります。そのような兆候を確認したら獣医師に相談してください。分娩約一日前に体温が低下することが知られています。毎日定時に検温し約1℃体温が下がると要注意です。また分娩前約半日ごろに乳汁中のカルシウム濃度が急激に上がることが知られています。乳汁中カルシウム濃度を簡単に測定するキットも市販されています。
 分娩がいよいよ近づくと発汗、挙動不審、これらの兆候は陣痛の初期状態です。分娩の第一段階は子宮が収縮し、下を向いて(下胎向)子宮内に存在していた胎児が徐々に回転しながら上を向き(上胎向)になり産道に向かって行きます。子宮口が開き尿膜が破れ最初の破水(一次破水)が起きます。この段階は一時間から二時間です。第二段階は子宮の収縮だけでなく母馬の腹筋の収縮も加わり子馬が娩出してくるまでの時期です。羊膜に包まれた前足(足胞)が見え隠れする時期です。二本の前足と頭が産道に乗ってる事が確認できたらこの時が助産のタイミングでもあります。足を同時じゃなく交互に引っ張るよう心がけてください。産道に胎児が十分に乗る前に羊膜を破ってしまうと産道が十分開かず難産の要因(人為的難産)となります。この時期は数分から一時間と様々ですが、30分以上かかるようでしたら何らかの異常がある可能性が考えられます。子馬の姿勢、前足、頭の状態を確認してください。正確に状態を確認できないで安易に引っ張ってはいけません。獣医師に相談してくさい。第三段階は後産(胎盤)が排出されるまでの段階で、数十分から3時間くらいかかります。最近では後産の排出の遅延が子宮の回復の遅れにつながり後の繁殖成績に与える悪影響も指摘されています。一時間経過しても排出されない場合はオキシトシンの投与が効果的です。6時間経過しても排出されない場合はほとんどが停滞を起こします。発熱や食欲の低下等があれば直ちに、全身症状がなくても半日以内に用手除去の必要があります。また排出された後産は必ず広げ、子宮角の先端部分の端まで全て排出されたか確認するよう心がけてください。牛と違い馬の場合は、後産停滞が産褥熱、蹄葉炎等の重大な疾病を引き起こす要因となります。またそれ以上に繁殖に大きな悪影響を及ぼします。


子馬

臍の処置

 娩出直後に臍帯を縛って切ってはいけません、なぜなら娩出後も胎盤、臍帯にはかなりの血液が含まれています。臍帯を切らないような介助を心がけなくてはならないのはもちろんですが、娩出後は臍帯の拍動が止まってから、臍から数センチのところを二ヶ所を持ち引きちぎるように切ります。臍帯には二本の動脈と一本の静脈あり切って縛ることにより血液が残り細菌が増殖する危険性があります。臍の消毒は十分に行い、数日間は臍の消毒をする必要があります。

初乳

 子馬は初乳を飲むことによって母馬から種々の免疫成分を譲り受けます。また初乳中の免疫成分は時間とともに急激に減少します。早期に十分な初乳を飲むかどうかが子馬の数ヶ月間の感染症に対する抵抗力に大きく影響を及ぼします。二時間以内に十分に初乳を摂取させてください。

胎便

 胎便とは胎児期に腸管内に蓄積してた排泄物です。初乳を飲むことによって12時間以内に排出されますが、排出されない場合、多くが直腸付近で停滞を起こしている場合があります。浣腸(ヒト用の安全に使用できる浣腸が普及しています)の必要があります。また数日以内の哺乳力の低下の原因が胎便停滞の場合もあります。

寄生虫

0205-3.jpg 子馬は生後1ヶ月前くらいから母親の糞を食べるようになります。これを阻止することはできません、むしろ子馬にとっては有用で必要なことです。子馬は母親の糞を食べることによって腸内に必要な微生物を摂取すると同時に粗飼料を分解、消化できる腸管の発育にも必要なのです。しかし母馬の糞中に寄生虫卵があると同時に子馬も感染してしまいます。その感染を防止する意味でも分娩後の母馬の駆虫は最も重要です。特に円虫は前腸管膜動脈に動脈瘤を作り、腸の蠕動を阻害し疝痛(腸捻転)の原因となります。写真は円虫による前腸間膜動脈瘤が原因による腸捻転で斃死した生後5ヶ月の子馬です。子馬にも生後2ヶ月より2ヶ月間隔で駆虫することがこのような事故を防ぐ意味でも重要です。0205-4.jpg












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