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生産水準の違いは何が原因でしょうか?


はじめに

 年々牛群の生産乳量は向上していますが、それに反して分娩間隔は伸びていると言われています。それでは原因は生産性の向上によるものなのでしょうか? 今回は、十勝NOSAIホームページ技術情報でも以前からお話ししてきました”周産期の管理”との関連を探るべく、十勝NOSAIで実施している牛群検診データ(約270戸)をもとに、乳量区分による生産・繁殖・周産期管理を比較したお話しさせていただきます。


泌乳曲線

 下のグラフは2産牛の泌乳水準別泌乳曲線です。産乳水準の違いは飛び出し乳量およびピーク乳量の差によることが分かります。では乳量を高めるにはどうすればよいのでしょうか? 牛はたくさん飼料を食べるとより牛乳を生産する動物です。でも次のグラフ ”周産期の乾物摂取量の変化” をみると、分娩してもすぐに採食量が上がらないことが解ります。では食べられない時期に栄養が十分得られるように”高濃度”の飼料を与えてはどうか? なんて考えが浮かんできませんか! 乾物摂取量の低い時期に ”濃厚飼料の多給” をしすぎると主食である”牧草”が食い込めなくなり、胃がもたれ具合が悪くなります。すると病気になり乳量が減り、分娩後の回復は遅れ、正常な泌乳曲線からはずれて思ったように生産性が上がらないのです。

image6.gif参考:群疾病情報分析管理システムデータ

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乳成分

下の表は乳量区分ごとの生産性を調べた結果です。乳成分の見方は、十勝NOSAIホームページ技術情報の2002年3~4月を参考にして下さい。ここで言えることは、高泌乳牛群はエネルギー(デンプン類)の充足を示す乳糖は高く、繊維の摂取状況を反映する乳脂率は多区分に比較して低めでした。しかし繊維の不足は問題のない水準でした。乳蛋白はエネルギー摂取やルーメンの恒常性を反映しますが、全区分で問題のない水準でした。乳蛋白は乳量が高いほど低い傾向がありますが、ルーメン内で作られる乳蛋白の基の一つである”微生物蛋白”は、牛個体ではあまり差がないことから、高泌乳牛は栄養分の利用効率が高く、乳生産を行っていると思われます。

  乳脂率 乳蛋白率 無脂固形分率 乳糖率 MUN
8000kg未満 4.11 3.31 8.83 4.52 10.97
8000kg台 4.08 3.26 8.79 4.54 11.52
9000kg台 4.01 3.24 8.78 4.56 11.33
10000kg台 3.86 3.21 8.78 4.58 12.01



繁殖成績

下の表は繁殖成績です。よく言われるように高泌乳=繁殖障害ではありませんでした。産乳水準が高い牛群は、全てにおいて繁殖成績は多区分よりも勝っていました。先に示しました”周産期の乾物摂取量の変化”で考えると、分娩後の乾物摂取量の回復が早いことが分かります。

  初回授精日数 授精回数 空胎日数 受胎率
8000kg未満 100.9 2.2 161.6 41.2
8000kg台 92.5 2.3 153.0 40.8
9000kg台 89.9 2.2 145.8 44.9
10000kg台 84.7 2.2 137.8 45.7



疾病発生率

下の表は主要疾病の発生率です。高泌乳牛群の良いところばかり述べましたが、周産期の病気、消化器病は多区分に比べ高い傾向でした。何故でしょうか? 乳熱をはじめ周産期病(胎盤停滞、産褥熱、ケトーシス、脂肪肝など)は、分娩前後のミネラルや栄養管理の問題が考えられます。どちらかといえば高泌乳牛群ではミネラル管理の問題が主因と思われます。消化期病(主に第四胃変位)はどうでしょう? 分娩後の採食量の回復段階での繊維の不足や濃厚飼料の増給および先のミネラル管理失技による周産期低カルシウム血症が問題になります。先ほど乳成分のところで、”高泌乳牛群はエネルギーは充足され、繊維摂取水準を示す乳脂率が低め”と言いましたね!ご理解いただけると思います。

  乳熱 周産期 第四胃変位 蹄病 その他消化器
8000kg未満 10.4 7.6 6.5 2.4 4.3
8000kg台 9.1 10.4 6.6 3.7 9.1
9000kg台 9.9 8.0 6.9 3.7 7.5
10000kg台 11.5 11.3 7.3 2.7 9.8



BCSの乳期推移

次にBCS(ボディーコンディションスコアー)を考えてみましょう。この項目は、牛の太り具合(=体脂肪の付き方)を数字に示したものです。牛はエネルギーと蛋白のバランスで乳生産を行います。たとえばエネルギーがたくさん給与され、蛋白が不足すれば乳生産が抑えられ牛は太ります。余ったエネルギーが体脂肪に蓄積されるからです。BCSから注目することは、産乳水準の高い牛群ほど最盛期以降の回復が早いことです。つまり乾物摂取量の回復が早いことを意味します。それはエネルギーが過剰なためではありません。栄養を有効に利用して、さらにBCSを回復できる栄養が吸収できているのです。

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BCSの変動

下のグラフは、乳期推移におけるBCSの減少および回復を示しました。高泌乳牛群では分娩後の減少(体脂肪の動員)が多く、このことが周産期病の要因になりますが、分娩後の十分食べられない条件で、乳生産を強いられる牛の宿命です。高泌乳牛ほど体脂肪をエネルギーに代えて生産を維持します。しかしながら最盛期までの体重変動は、乳量が高い高泌乳群の方が少なく、乾乳期に十分栄養を蓄積していることが伺えます。

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乾乳後期の管理

周産期の管理はどうでしょう? 下のグラフのとおりです。移行期の管理、つまり”馴らし給与”の実施は高泌乳群ほど行われていました。また最後のグラフは、”馴らし給与”の内容です。産乳水準に比例して、馴らし給与日数と濃厚飼料の給与量が高く栄養の要求量を満たしていました。

image1.gif

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牛本来の生産性は、例外を除きあまり差がないと思います。何が”差”を生むのでしょうか? それは今までお話しした、周産期の管理と泌乳後半の栄養充足(=BCSの回復)にあることが分かります。つまり ”乾乳後期の馴らし給与” が重要と言うことです。今回の調査は乳検・牛群検診データのほんの一部分だけです。その他にも粗飼料品質、カウコンフォートなどの影響は大きいものです。でも全ての改善はできません。自分で実行が可能な選択肢を選んで、辛抱強く続けることが重要です。 ”うちの牛は乳がでない” のではなく、牛の本来の能力を発揮させる管理が行われていないのではありませんか? 頭で理解していても、行動が伴わなければ進展はありません。あなたの努力に牛たちがきっと答えてくれますよ! 何か疑問などありましたら、診療所技術職員に相談したり、牛群検診で現状を確認することも可能です。

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