2002_乳検情報の利用について of tokachi_nosai

G_2002.png

乳検情報の利用について


 生産性を考える時に、乳量は何kg、乳脂肪は何%、乳蛋白は何%などという声はよく耳にします。しかし自分の牛群がどの泌乳ステージ゙にいるのか?繁殖状況はどうなのかなどと聞かれるとどうでしょう。的確に答えられますか?身近な情報で自分の牛群を、適切に評価するために”乳検情報”の意味・見方について考えてみましょう。

では十勝農協連の乳検のデータで説明します。(乳検牛群情報の一部)

検定月日 牛群情報
経産牛頭数 搾乳牛頭数 搾乳牛率 初産牛率 平均産次 分娩後日数 分娩頭数 除籍頭数
3月5日  44 43 98 35 2.5 201    
4月2日 44 43 98 37 2.4 227 1 1
5月9日 48 39 81 49 2.2 202 5 1
13ヵ月表示
2月16日 49 46 94 29 2.6 169 5 1
3月15日 48 42 88 19 2.6 169 2 1
平均 48 41 85 38 2.4 187 46 10
組合平均 48 40 83 28 2.8 178

十勝平均 56 48 86 31 2.7 185

赤数字は高値、青数字は低値で問題があります。

◎ 分娩後日数(目標 150~170日)は、現在の牛群が泌乳ステージのどの位置にあるのかを示しています。繁殖状況や生産性を反映しています。
 (200日以上は、繁殖障害による空胎期間・分娩間隔の延長などを示します)

*本牛群は繁殖障害による分娩頭数のバラツキが顕著で分娩後日数が延びている例です。数値の評価には、分娩頭数と除籍頭数も考慮することが必要です。

◎ 搾乳牛率 (目標85前後)変動が大きい場合や低い場合は、分娩の偏りなど繁殖管理に問題があります。この表は牛群の産乳状況を示しています。

検定月日 産乳の状況
乳量(搾乳牛) 乳脂率 乳蛋白率 P/F比 MUN 無脂固形 乳糖 補正乳量
3月5日  31.2 3.5 3.2 91 14 8.7 4.5 35
4月2日 26.7 3.8 3.3 87 14 8.8 4.6 33
5月9日 24.2 3.6 3.1 86 17 8.6 4.5 28
6月4日 26.5 3.5 3.2 91 11 8.8 4.6 31
7月5日 26.7 3.6 3.2 89 15 8.7 4.6 31
8月8日 28.1 3.4 3.1 91 12 8.7 4.6 31
9月14日 32.3 3.6 3.1 86 10 8.7 4.6 33
10月11日 33.3 3.4 3.2 94 11 8.8 4.6 32
11月11日 30.8 3.7 3.2 86 8 8.8 4.6 32
12月11日 30.6 4.0 3.3 83 14 8.9 4.6 31
1月16日 33.1 3.7 3.2 86 14 8.9 4.7 32
2月16日 27.7 3.9 3.2 82 15 8.8 4.6 29
3月15日 35.0 3.7 3.2 86 14 8.6 4.5 35
平均 29.4 3.6 3.2 89 13 8.8 4.6
組合平均 28.3 4.0 3.3 83 15 8.8 4.6
十勝平均 28.4 4.1 3.3 80 12 8.9 4.6

赤数字は高値、青数字は低値で問題があります。

1. 乳量(搾乳牛)

 月ごとの牛群の平均乳量を示しています。先の分娩後日数、牛群構成の影響を受けるため数値は変動します。(単純に比較はできません)

2. 乳脂率(目標 3.8%)

 乳脂率は粗飼料の摂取状況、エネルギー(油脂)の摂取状況を反映します。乳脂肪は通常、粗飼料がルーメン内で消化されできるVFA(揮発性低級脂肪酸;酢酸、酪酸)から50%、飼料中の油脂から40%、体脂肪から10%で構成されると言われています。乳脂率で注意が必要なのは、泌乳初期牛の割合が多いと高い傾向があります。理由は牛の分娩後の生理で、泌乳のピークは50日前後に対して、採食ピークは70日前後とギャップが生じます。そのため牛は自分の体脂肪をエネルギーとして利用します。その時、脂肪酸の一部が乳脂肪に変わり乳脂率を高めます。(但し、分娩後60日未満で4.5以上を示す個体は、過度の体脂肪動員を示しているので注意が必要です)。また油脂多給(乾物摂取量の 5%以上)の場合、乳脂率は維持できますが、ルーメン内の微生物は油脂を利用できないためルーメン発酵は抑制され、栄養分利用が低下します(乳蛋白、無脂固形が下がります)。

3. 乳蛋白率(目標 3.2%)

 乳蛋白はエネルギー・蛋白摂取状況を反映します。乳蛋白は通常、ルーメン内微生物がつくる菌体蛋白やルーメンで分解されない蛋白(非分解性蛋白、バイパス蛋白:UIP)により作られます。”菌体蛋白”とはルーメン微生物が飼料中のNFC(非繊維性炭水化物:エネルギー;澱粉など)とルーメンで分解される蛋白(分解性蛋白;DIP)を利用してつくる蛋白で、小腸で消化され乳蛋白や体蛋白に利用されます。飼料中のエネルギーが不足すると、菌体蛋白合成量が減ったり、肝臓でに糖新生にアミノ酸が使われるため乳蛋白は低下します。つまりエネルギー不足に関連することが伺われます。また季節的に低下する傾向があり、多くは粗飼料の質・給与量の不足が原因になることが多いです。

4. P/F比(目標 70~85)

 乳蛋白と乳脂率のバランスです。85以上では粗飼料不足、エネルギー過剰を意味します。低い場合は、乾物摂取量の低下を意味します。飼養管理における粗濃比の目安となります。

5. MUN(乳中尿素窒素)(目標 10~14)

 飼料中のエネルギーと蛋白のバランスの指標です。MUNは先ほどお話した菌体蛋白と関係があります。つまり飼料中のNFCとRDP(ルーメン分解性蛋白)のバランスを反映しています。エネルギーが不足すれば、ルーメン微生物のエネルギーが不足するため菌体蛋白合成が進まず利用されなかった蛋白(RDP)からのアンモニアが増え、MUNは高くなります。つまり飼料中蛋白質の利用効率の指標です。

 * アンモニアは体内では害があるため、肝臓で無毒のMUNに換えて体外に放出します。この時余分なエネルギーの消耗と肝機能に負担がかかります。



6. 無脂固形分(目標 8.6以上)

 無脂固形分は、乳脂肪、乳蛋白、乳糖、MUN、ミネラルなど生乳中の固形分の総和です乳蛋白と同様にエネルギー摂取状況を反映しています。


7. 乳糖(目標 4.5以上)

 乳糖は主としてエネルギー(特に澱粉)の摂取状況を反映します。通常、飼料中の澱粉が、ルーメンで分解されてできるVFA(プロピオン酸)を原料に肝臓でブドウ糖になり、これを利用し乳腺細胞でつくられます。泌乳が始まると乳糖は義務的に生産されるもので、体内で厳密に調整されているため比較的数値の変動は少ないものです。乳糖の低下は、十勝ではコーンサイレージの通年給与できない時期、給与していない牛群、放牧管理などで澱粉補給が不十分な時にみられます。この事からエネルギー(澱粉)不足の影響が大きいことが解ります。また重度乳房炎、肝障害時には低下するといわれています。

8. 補正乳量

 牛群の月別生産性を比較するため、牛群構成(産次2産、分娩後日数150日)、乳成分(乳脂率4.0%、乳蛋白率3.3%)を同一条件に補正した乳量です。補正乳量の変動は飼養管理の変化を意味します。

*表の牛群は、濃厚飼料多給、粗飼料不足傾向が顕著です(乳脂肪率の低下、P/F比の増加)。夏場の乳脂肪率、乳蛋白率の低下は、暑熱による採食低下が原因と思われます。MUNと補正乳量の変動が大きく粗飼料質の変化が大きいことが考えられます。

  • 1. 乳量(搾乳牛)月ごとの牛群の平均乳量を示しています。先の分娩後日数、牛群構成の影響を受けるため数値は変動します。(単純に比較はできません)
  • 2. 乳脂率(目標 3.8%)
  • 乳脂率は粗飼料の摂取状況、エネルギー(油脂)の摂取状況を反映します。乳脂肪は通常、粗飼料がルーメン内で消化されできるVFA(揮発性低級脂肪酸;酢酸、酪酸)から50%、飼料中の油脂から40%、体脂肪から10%で構成されると言われています。乳脂率で注意が必要なのは、泌乳初期牛の割合が多いと高い傾向があります。理由は牛の分娩後の生理で、泌乳のピークは50日前後に対して、採食ピークは70日前後とギャップが生じます。そのため牛は自分の体脂肪をエネルギーとして利用します。その時、脂肪酸の一部が乳脂肪に変わり乳脂率を高めます。(但し、分娩後60日未満で4.5以上を示す個体は、過度の体脂肪動員を示しているので注意が必要です)また、油脂多給(乾物摂取量の 5%以上)の場合、乳脂率は維持できますが、ルーメン内の微生物は油脂を利用できないためルーメン発酵は抑制され、栄養分利用が低下します。(乳蛋白、無脂固形が下がります)
  • 3. 乳蛋白率(目標 3.2%)
  • 乳蛋白はエネルギー・蛋白摂取状況を反映します。乳蛋白は通常、ルーメン内微生物がつくる菌体蛋白やルーメンで分解されない蛋白(非分解性蛋白、バイパス蛋白:UIP)により作られます。”菌体蛋白”とはルーメン微生物が飼料中のNFC(非繊維性炭水化物:エネルギー;澱粉など)とルーメンで分解される蛋白(分解性蛋白;DIP)を利用してつくる蛋白で、小腸で消化され乳蛋白や体蛋白に利用されます。飼料中のエネルギーが不足すると、菌体蛋白合成量が減ったり、肝臓でに糖新生にアミノ酸が使われるため乳蛋白は低下します。つまりエネルギー不足に関連することが伺われます。また季節的に低下する傾向があり、多くは粗飼料の質・給与量の不足が原因になることが多いです。
  • 4. P/F比(目標 70~85)
  • 乳蛋白と乳脂率のバランスです。85以上では粗飼料不足、エネルギー過剰を意味します。低い場合は、乾物摂取量の低下を意味します。飼養管理における粗濃比の目安となります。
  • 5. MUN(乳中尿素窒素)(目標 10~14)
  • 飼料中のエネルギーと蛋白のバランスの指標です。MUNは先ほどお話した菌体蛋白と関係があります。つまり飼料中のNFCとRDP(ルーメン分解性蛋白)のバランスを反映しています。エネルギーが不足すれば、ルーメン微生物のエネルギーが不足するため菌体蛋白合成が進まず利用されなかった蛋白(RDP)からのアンモニアが増え、MUNは高くなります。つまり飼料中蛋白質の利用効率の指標です。
  • *アンモニアは体内では害があるため、肝臓で無毒のMUNに換えて体外に放出します。この時余分なエネルギーの消耗と肝機能に負担がかかります。
  • 6. 無脂固形分(目標 8.6以上)
  • 無脂固形分は、乳脂肪、乳蛋白、乳糖、MUN、ミネラルなど生乳中の固形分の総和です。乳蛋白と同様にエネルギー摂取状況を反映しています。
  • 7. 乳糖(目標 4.5以上)
  • 乳糖は主としてエネルギー(特に澱粉)の摂取状況を反映します。通常、飼料中の澱粉が、ルーメンで分解されてできるVFA(プロピオン酸)を原料に肝臓でブドウ糖になり、これを利用し乳腺細胞でつくられます。泌乳が始まると乳糖は義務的に生産されるもので、体内で厳密に調整されているため比較的数値の変動は少ないものです。乳糖の低下は、十勝ではコーンサイレージの通年給与できない時期、給与していない牛群、放牧管理などで澱粉補給が不十分な時にみられます。この事からエネルギー(澱粉)不足の影響が大きいことが解ります。また重度乳房炎、肝障害時には低下するといわれています。
  • 8. 補正乳量は牛群の月別生産性を比較するため、牛群構成(産次2産、分娩後日数150日)、乳成分(乳脂率4.0%、乳蛋白率3.3%)を同一条件に補正した乳量です。補正乳量の変動は飼養管理の変化を意味します。

 表の牛群は、濃厚飼料多給、粗飼料不足傾向が顕著です(乳脂肪率の低下、P/F比の増加)。夏場の乳脂肪率、乳蛋白率の低下は、暑熱による採食低下が原因と思われます。MUNと補正乳量の変動が大きく粗飼料質の変化が大きいことが考えられます。

泌乳反応について

 泌乳曲線の分析です。初産と経産牛では泌乳曲線が異なるため分けて示しています。泌乳曲線は、乳生産の問題点を把握できます。乳期乳量は、ピーク乳量と泌乳の持続性で決まります。

  検定回数 1 2 3 4 5 6 7 8回以上 ピーク乳量
初産 最近4ヵ月 31.2 33.2 30.6 27.0




30.8
今産次 27.9 30.2 29.4 27.2 27.5 25.7 24.2 20.3
持続性 8 -2 -8 1 -7 -6 -16
2産以上 最近4ヵ月 43.0 41.0 39.1 32.6



47.0
今産次 43.3 43.0 40.3 37.8 34.9 32.4 33.0 25.3
持続性 1 -8 -6 -8 -7 2 -23

表は泌乳反応を示しています。

◎持続性とは分娩後の牛群平均産乳状況を示します。

①検定1、2回の持続性は、乾乳期管理、泌乳初期の管理を反映します。
目安:初産 5 ~ 9 %、2産以上 3 ~ 7 %増加します。
②分娩後3 ~ 6回(最盛期~中期:200日以内)の持続性は乳期乳量に大きく影響します。 分娩後の急な濃厚飼料増給、粗濃比の低下するような管理では、ピーク乳量後の持続性の低下が顕著です。
目安:初産  -3 ~ -5 %、2産以上 -7 ~ -9 %減少します。

◎ピーク乳量とは、分娩後50日前後にみられる最高乳量です。
ピーク乳量は乳期乳量に大きく影響します。ピーク乳量 1kg増えると、乳期で200kg乳量が増えると言われています。また初産のピーク乳量は、2産以上のピーク乳量の75%が目安になります。

*本牛群は、初産のピーク乳量が低く、持続性が低いことがわかります。また2産以上では、初回の持続性が低くなっています。これは初妊分娩前管理、経産牛の乾乳後期(馴らし給与)期間が短く、濃厚飼料給与量が多く、分娩後の濃厚飼料増給も早く多いため、乾乳期間での食い止り、分娩後の採食回復が順調に回復してないことが原因と思われました。

まとめ

 牛群の生産性を経時的に知る手段として、乳検情報は有用です。現状の数値も重要ですが、過去の問題点がどこにあるのか(例えば、1、2番の牧草給与の切り替わり時期、コーンサイレージ給与時期、サイレージ発酵品質の劣悪な時期などによる影響)を知ることで、今後の対策を効果的に行うことができます。 また、乳成分は、ルーメン発酵を反映しています。基本は粗濃比、エネルギー・蛋白のバランスを適正化することで、ルーメン微生物を上手くコントロールすることが重要です。是非、乳検牛群情報(バルク旬報)をチェックして、無駄・無理な飼料給与を見直し、牛群の健康、コスト削減、生産性向上を目指しましょう。

ページトップへ

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年

2003年

2002年