2003_ルーメンアシドーシスについて of tokachi_nosai

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ルーメンアシドーシスについて



 日頃良く聞く話ですが、”蹄葉炎”が増えたとか、”乳脂肪率が低いとか”牧草や飼料設計後に”消化器病や蹄病”が増えたなどという話を聞きますが、原因としてルー メンアシドーシスの関与が考えられます。では”アシドーシスとは何なのか”、”問題と なる飼養管理”とはどのようなものなのか、”改善ポイントはどこにあるか”を考えてみましょう。



ルーメンアシドーシスとは

image2.gif図1 均衡が保たれた状態image3.gif図2 ルーメンアシドーシスの状態 デンプン質はルーメン内で分解され、微生物により発酵をうけ揮発性低級脂肪酸(VFA)になります。この発酵酸の生成量が、牛のもつ緩衝能力(唾液による緩衝)とルーメンからの吸収能力を超えたときに起こる発酵酸の過剰な状態です(図1、2)。



ルーメン内の変化
 炭水化物のうち繊維は主に酢酸、繊維以外の炭水化物はプロピオン酸になります。ご存知のように酢酸は乳脂肪の形成に利用されます。またプロピオン酸は牛の主要なエネルギー源になる一方、ルーメンのpHを下げる要因です。
過剰な発酵酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸)はpHを下げます。
繊維分解菌はpH6以下になると活動が低下します。(=繊維消化率の低下)
発酵酸はルーメンの収縮力を低下させます。(=内容物の混合が阻害)
発酵酸はルーメン絨毛に打撃を与えます。(=VFA吸収面積の減少)
主体牧草のNDF(総繊維:刈り取り時期の目安)により、飼料の通過速度や消化
速度が異なるため、発酵酸の種類、量は変化します。
 *発酵酸を上手くコントロールできない事は、ルーメン発酵の恒常性(=最適なpH6.0~6.3)を乱し、VFA生成・菌体蛋白合成を抑制し結果的に生産性を低下させ、消化器病や蹄病(蹄葉炎)を起こすことになります。


牛からのサイン

  • 与えた牧草を残していませんか。(充足しているか又は嗜好性が悪いか、物理的
  • に食べられないのか?)
  • 飼料給与1~2時間後、概ね70%以上の牛で反芻がみられますか。
  • 採食が急に落ちた牛がいませんか?
  • 乳脂率の低い牛が多くいませんか?(分娩後60日以降で3.6以下は要注意)。
  • 軟便や便の酸臭が強くなっていませんか? (特に飼料設計後など)。
  • 跛行牛は増えていませんか?


飼料給与による影響

 下図はTMRと分離給与におけるルーメン内発酵酸生成量を示しています。発酵酸量の変動は、ルーメン内pHの変動を意味します。TMRでは安定した状態ですが、分離給与の場合は濃厚飼料給与後に急激に発酵酸量が増え、安定化するまでには4~5時間程度かかる事が解ります。

図3 TMR給与の発酵パターン (大場原図修正)
image6.gif

図4 分離給与パターン(濃厚飼料1日2回給与) (大場原図修正)
image4.gif

どうすれば良いか

 ルーメンアシドーシスの予防には、”ルーメン発酵(=pHの変動を少なく)の安定”と”十分な反芻による唾液分泌”できる飼料給与が必要です。また発酵酸を吸収できる絨毛の発達が必要です。しかしながら、アシドーシスを恐れて発酵を押さえ過ぎてpHを高く維持すると、エネルギーが不足して生産性を落とします。結局生産性向上にはルーメン発酵を最大化、緩衝能力を高める管理が必要です。


a) 乾乳期の管理

  1. 乾乳後期は3週間とり、穀類として3~4kg与え絨毛を伸ばす準備をしましょう。
  2. 嗜好性の高い牧草を与え、十分反芻を起こさせ唾液分泌を高めましょう。

b) 分離給与の場合

  1. 分娩直後からコーンサイレージを多給せず、良質牧草を多く与えましょう。
  2. 分娩後の濃厚飼料給与のピークは30~40日としゆっくり増やしましょう。乳量に応じた濃厚飼料の給与はこの期間は厳禁です。
  3. 濃厚飼料の単独給与を行わず、給与量は1回・3kg以内にしましょう。また次の濃厚飼料給与まで4時間以上あける管理が必要になります。
  4. 嗜好性の高い牧草を与えましょう。低質牧草でも切断して与えると採食量を増やすことが可能です。また飼槽に飼料が無い時間を減らす工夫も必要です。

c) TMR給与の場合

  1. 021017-005.jpg選び食い不断給与・飽食が原則です。栄養濃度を保たせる意味でも掃き寄せをこまめに行いましょう。
  2. 水分の目安は50%です。低い場合は選びくいが見られ、ルーメン発酵の恒常性を乱します(写真1)。
  3. 粗濃比、有効繊維確保のために乾草類を2kg程度入れましょう(写真 2)。
  4. 搾乳時に濃厚飼料の給与はなるべく避けましょう(図 3参考)。

d)共通

  1. 010704-002.jpg有効繊維の不足(右端が有効繊維部分)牧草の刈り取り時期(NDF)や質に応じて、発酵速度の異なるデンプン質を使い発酵酸を調整しましょう。
  2. 過密は水槽・飼槽の不足による採食低下の原因になります。計算した通り飼料を食べていないことは粗濃比の変動(=ルーメン発酵非効率化)を意味します。


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