2002_牛群の健康維持・生産性向上・疾病予防のために of tokachi_nosai

G_2002.png

牛群の健康維持・生産性向上・疾病予防のために


 広報とかち(No11)で周産期疾病予防対策として、移行期の管理 (馴らし給与) と泌乳初期の飼養管理の重要性を述べました。牛群の疾病予防・生産性・繁殖性の向上には、栄養バランスがとれ、適正な粗濃比の飼料をいかに食い込ませるかが鍵となります。乾物摂取量を決める 要因としては牛、飼料、飼養環境が複雑に絡み合っています。今回は牛群検診で調査した飼養管理を基に"乾物摂取量の制限要因"について考えてみたいと思います。

牛のボディーコンディションスコアー(BCS)

 BCSは牛の脂肪のつき方を数値化したものです。一般的には過肥牛は蓄積脂肪によるルーメン容積の縮小により、正常なBCSの牛に比べ乾物摂取量が20~30%低下するといわれています。過肥牛は分娩を境に本来栄養要求が高まる時期に一層採食量が間に合わず、結果的に栄養不足となり、周産期疾病を起こします。そこでポイントは泌乳後期にBCSを3.0~3.5程度に調整することが必要です。低泌乳牛を長く搾ることは過肥を作ることになります。調整は乳量ではなくBCSにより濃厚飼料 (原則は乳量10kgで3kg上限) を与える事が必要です。分娩時には3.25~3.5程度が理想です。

検診実施牛の乳期別BCS(123牛群)

乳期平均  BCS
乾乳期 3.34 ± 0.60
泌乳初期 2.61 ± 0.56
最盛期 2.34 ± 0.46
中期 2.48 ± 0.49
後期 2.86 ± 0.60

飼料の要因


1. 飼料の問題として粗飼料の収穫時期が重要です。適期収穫を逃すと栄養分が低下し、総繊維(NDF)が増加します。NDFは乾物摂取量との関係が深く、NDFが増えることにより"ルーメン内でのがさ"が増えて採食量が制限されます。日本飼料標準ではNDFは35%(粗飼料から75%必要)を奨励しています。NDFの不足では乾物摂取量は上がりますが、ルーメン環境を乱し、ルーメンアシドーシス、乳脂肪率低下を起こします。

0202-1.jpg2. "繊維の長さ"も乾物摂取量に大きく影響します。通常では繊維の長さが短いと、ルーメン内通過速度が速くなり乾物摂取量は増えますが、反芻の減少・唾液分泌量の減少が起こり結果的にルーメン環境を乱し、ルーメンアシドーシス・乳脂肪率低下を引き起こします。細切グラスサイレージを単独で使う場合は、有効繊維不足になる傾向が多いようです。有効繊維とは反芻を起こすために必要な長さの繊維です(牧草サイレージでは5cm以上の長さの繊維が15~20%、TMRでは10%程度必要です)。



 ミキシング(TMR)の有効繊維確認法としてパーティクルセパレーターを使い実施します。表は標準的なガイドラインを示しています。

セパレーターの基準  上段(長い繊維) 中段(中間) 下段(主に穀類)
TMR 10<
30-50
<50
Hay
20<
20-50
<40
CS

40<
<60 

 十勝の現状は上段 (有効繊維) は10.6±6.7、下段は45.9±10.4でした。有効繊維割合の低いTMRでは四変手術、蹄病の発生が多くなる傾向がみられます。

3. 粗飼料・TMR水分量が乾物摂取量に及ぼす影響は、水分含量50%以上の場合1%ますごとに乾物摂取量は0.02%ずつ低下すると言われています。ただしサイレージ類に関しては採食量が発酵品質に依存しますので十分注意が必要です。

飼養管理の問題

1. 分離給与ではTMRに比べ粗濃比の低下が起こり易くなります。飼料の給与手順や濃厚飼料1回給与 量過剰によるものが主な原因です。

  • ①晩の粗飼料給与量不足(朝飼槽が空の状態)で朝一番に穀類が給与されるケース。
  • ②濃厚飼料の給与間隔が短いケース。
  • ③1日の内で粗飼料と濃厚飼料給与の偏ったケース。

 つまり人間で言えば"すきっ腹の状態でお菓子を食べる"ようなものです。人間との違いはルーメンという発酵槽があり、そこにたくさんの微生物(繊維分解、澱粉分解する)がいる事です。微生物を上手く機能させるためには粗濃比、栄養バランスをとることが必要です。基本的には濃厚飼料は1回3kg上限に、給与間隔は4時間程度空けることが必要です。そのことがルーメン内発酵の安定化につながります。

0202-3.jpg0202-2.jpg

 牛の行動は採食・飲水・寝る(反芻)の繰り返しです。飲水行動が制限されると当然採食行動にも影響し、生産性の低下につながります。通常1日に飲水は15回前後、1回飲水量は3.8~5.7㍑です。このことからも清潔で十分量の飲水確保が必要です。

0202-4.jpg0202-6.jpg

0202-5.jpg2 .飼槽について

  •  ①楽な姿勢で採食が可能なこと。
  •  ②凹凸が無く清潔であること。
  •  ③十分なスペースの確保が重要です。

3. 牛床が硬いと飛節の腫れ(疼痛)による採食低下、起臥回数減少による反芻回数・唾液分泌量不足、乳房流入血流量の減少により採食・生産性に大きく影響します。
飛節のスコアーとは、飛節の状態を数値化して評価するものです(1から5までの5段階)。
飛節スコアーが3以上になると、ストレス(疼痛)により乾物摂取量に影響すると言われています。
下のグラフは検診実施牛群の繋留・非繋留による牛床と飛節(飛節スコアー)の状況です。

0202-7.jpg

0202-8.jpg

0202-9.jpg

 調査から、どの飼養スタイルでもゴムマット・コンクリート床は飛節への影響(スコアーと問題牛割合)が大きいことがわかります。ゴムチップマットでは飛節への影響が緩和され、寝ている時間が延長することにより、反芻回数が増え唾液分泌量が増えることでルーメン内の緩衝能力を高め、結果的に採食量・生産性向上効果が認められます。飛節の炎症による疼痛や、寝ている牛が少ないことは、直接乾物摂取量・生産性低下を意味します(通常飼料給与後3時間後の牛群の起立割合を見ることで牛床の状況がわかります)。

0202-10.jpg

 以上から乾物摂取量を左右する要因として、牛よりも飼養管理の問題点が多いことが御理解していただけたと思います。そこで注意点として次の項目を再確認して下さい。

  1. 基本は粗飼料の乾物摂取量を増やし、不足分を濃厚飼料で補う事です。飼料設計・飼料計算も机上でパソコンにより簡単に実施する事ができます。計算上理想的な栄養濃度の飼料であっても、反芻動物である牛にとっては、ある程度の長さの(反芻を起こす長さ)粗飼料が必要です。
  2. 飼料の給与順、給与方法、混合方法、給与環境によりルーメン環境に対する影響は異なります。"ルーメン発酵の安定化"="ルーメン微生物の活性化"="牛の健康"です。
  3. 適期収穫による栄養価や嗜好性の高い牧草の確保が必要です。
  4. 牛の行動(食べる-飲む-寝る)を妨げないような快適な環境を与えることが必要です。

牛を取り巻く環境には採食を制限する要因は多く存在します。


ページトップへ

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年

2003年

2002年